自由診療の医師は「腕に覚えあり」

専門外来だからといって、特に医療費が高くなったりすることはない。「費用は、診察や治療内容が(健康保険の対象となる)保険診療か、(健康保険の対象にならない)自由診療かで左右される」(松井氏)からだ。

「アンチエイジング外来」などの場合は、疾病の治療には当たらないため健康保険の対象にならず、自由診療となることが多い。薄毛外来も、円形脱毛症や皮膚の炎症による薄毛であれば保険が適用されるが、それ以外の場合は自由診療となり、費用も高くなる。

自由診療と聞くと、「法外な費用がかかりそう」「信頼できるかわからない」といった印象を受けるかもしれないが、富家氏はそうとは限らないと説く。「自由診療か保険診療かに関係なく、診察や治療内容の質は病院や医者によってばらつきがあります。ただ、自由診療の場合は、患者が医療費を全額自費負担するため、効果が出なければすぐに“客離れ”が起こります。このため、自由診療を行う医師には、自分の腕に自信があるケースが多いと考えられます」(富家氏)。

昔から、特定の病気や体の部位などを専門にする医師はいたが、それを専門外来の形で掲げるようになったのは最近だ。富家氏は「これまで患者は受け身の存在で、病院の側も患者の受診に役立つ情報を積極的に出したりはしていませんでした。わかりやすい名称の専門外来が増えているのは、患者が自分で調べて病院を選ぶ時代に変わってきたことの表れではないでしょうか」と話す。

▼「何科に行けばいいかわからない」、そんな悩みに専門外来がこたえる
多種多様な名称が並ぶ専門外来。患者にとってわかりやすいように工夫が施されたネーミングも目立つ。同じ名称でも病院によって治療の対象や内容が異なるため、通院前に確認を。

・薄毛外来
・肥満外来
・アルコール外来
・禁煙外来
・もの忘れ外来
・いびき外来
・便秘外来
・口臭外来
・めまい外来
・肩こり外来
・睡眠障害外来
・尿失禁外来
・うつ外来
・引きこもり外来
・スポーツ外来
・ワクチン外来
・腰痛外来
・頭痛外来
・睡眠時無呼吸外来
・フットケア外来
・アンチエイジング外来
・セカンドオピニオン外来
・働く女性専門外来
・更年期外来
・思春期外来
(編集部調べ)

医師・ジャーナリスト 富家 孝
東京慈恵会医科大卒。開業医、病院経営、日本女子体育大助教授、早稲田大講師等を経て、医療コンサルタントに。新日本プロレス・ドクター。著書に『不要なクスリ 無用な手術』など65冊。
 

医学ジャーナリスト 松井宏夫
中央大学卒。日本医学ジャーナリスト協会副会長。東邦大学医学部客員教授。名医本の執筆やテレビ番組の監修に定評がある。著書に『長生き「できる人」と「できない人」の習慣』など多数。
 
(撮影=向井 渉 撮影協力=医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック)
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