夫婦の亀裂の原因は「実家間の経済格差」にあり

毎月の定期的な収入だけでなく、「経済的ゆとり」に焦点を当てた場合も、妻より夫のほうが圧倒的に恵まれていました。夫の実家は3代にわたって工務店を営んでおり、地元出身の議員との太いパイプもあります。

しかも、今まで築き上げた資産のなかには20棟を超えるアパートも含まれており、地主としても同地区で5本の指に入る資産家です。夫は長男で、誠也くんは1人息子。実家の跡取りですから、いずれ実家の資産、地元の基盤、そして工務店社長の地位……すべてを受け継ぐことができるのです。

一方で妻の実家はサラリーマン家庭でこれといった資産はなく、現在も2000万円近い住宅ローンを抱えていました。妻の父親は現在64歳で、母親もパートをしていましたが、年齢のわりには借金が多い状態です。両家の「実家間格差」が明白で、息子がどちらの家を継いだほうがいいかも一目瞭然です。

今回のように夫の実家の家柄が良く(会社の経営者、寺院の住職、地元の名士など)、夫が長男なら(もしくは長男でなくても実家を継ぐ約束をしているのなら)、その「実家間格差」でどちらが子供を引き取るかが決まることも多いのです。それにもかかわらず、妻はちょっとありえない案を出してきました。

▼息子を夫の戸籍に入れたまま、「私が引き取る」

「それなら誠也はそっちの戸籍に入れておくから!」

※写真はイメージです

法律上、未成年の子を非親権者から親権者の戸籍へ移動させることができるのは親権者だけです。婚姻期間中は妻子ともに夫の戸籍に入っていますが、離婚と同時に妻は夫の戸籍から抜けます。そして妻が子供の親権を持った場合、現在、夫の戸籍に入っている子供を離婚後、妻の戸籍に移動させることも可能ですが、妻は「移動させない」と言うのです。

そもそも戸籍の所在と親子の関係は直接結びつきません。離婚して妻が親権を持ち、子供を監護養育しても、夫と息子が親子であることに変わりはありません。子供がどちらの戸籍に入っていても息子が夫の跡取りに据えても問題ないはず、というのが妻の言い分です。