実家間の格差は「子育ての仕方の違い」に現れる
夫は夫婦(両親)が円満で平和な家庭で育てられました。母親はいつも遊び相手をしてくれて、十分な愛情を注いでくれました。一方、妻の母親はどうでしょうか?
「そういえば子供の頃は母にほったかしにされ、寂しかったと言っていました」
夫はそんなふうに回顧しますが、妻の家庭は共働きなので妻は「鍵っ子」。母親が帰ってくるまで1人で留守番をさせられることも多かったそうです。
「愛情を込めた料理を食べさせてあげなよ」
「子供から目を離さないので、もう少しちゃんと親らしく見守ってくれ」
「誠也が見ているのにけんかをふっかけてくるのはやめてくれ」
そんなふうに夫は何度も妻のことを叱ったり、注意したり、諭したりしたのですが、夫婦の間には「埋められない出自の壁」が立ちはだかっているので、妻はいつも「何のこと?」という反応だったといいます。「また、おかしなことを言っているわ」と一笑に付されてしまい、ほとんど効果はなかったのです。
▼正反対の2人がなぜ結婚することになったのか?
祖父母から父母へ。父母から自分へ。そして、自分から我が子へ。血のつながった「一族」の遺伝子はよくも悪くも継承されるということなのか。代を重ねても、根本的に同じような性格、価値観、考え方の持ち主になってしまうのでしょうか。
それとも親が親なら子も子だから、妻(息子)は母から受けたしつけ方や教え方、怒り方が正しいと思い込み、わが子を従わせるのでしょうか。もしくは「三つ子の魂百まで」という通り、幼少期に教え込まれた思考回路や行動パターンは「刷り込み」が効いて大人になっても抜けきらず、自分の子にも同じように教え込んでいるのでしょうか。
ご相談を受けるなかで、夫に妻とのなれ初めをお聞きしました。
すると、裕福な家庭に生まれたのんびり屋である自分が、「僕と全く違うタイプ」である妻に惹かれ、惚れて、結婚にいたったと話してくれました。平成の世で「家柄」という言葉を使うのは時代錯誤かもしれません。しかし、実家間の格差は「子育ての仕方の違い」に現れることが多く、思わぬ形で夫婦関係にヒビが入り、最終的に離婚せざるを得ない状況に追い込まれることは少なくありません。いや、正直に言えばそうした相談はもう聞き飽きるくらい山ほどあります。今回ご紹介したケースは、そんな数多ある中のひとつ。氷山の一角です。