【鉄則5】任せた結果は人事評価にしっかりと反映

任せた仕事がどうなったかについては、結果がどうであれ本人にきちんとフィードバックしなければならない。

うまくいったのなら、良かった点をフィードバックする。そうでなければ課題をフィードバックする。「任せた仕事がうまくいかなかった」「やむなく仕事を他者が引き取った」「担当を変えざるを得なかった」などの場合も、本人へのフィードバックを忘れてはならない。任せられる状態になっていない部下自身の責任をきちんと伝えることが大前提だ。

ここでリーダーが犯しがちなミスは、この「責任」を理解させるプロセスなしに、部下のいまのレベルに合った新たな業務目標をすぐに設定してしまうことだ。

目標管理の概念を導入している企業の多くは、期初に立てた業務目標の達成度で成績をつける仕組みになっている(最終の評価結果はさまざまな調整が入るが)。本来の役割に求められている責任を果たしていないにもかかわらず、上司の想いが伝わらないばかりか、制度運用ルールである「目標達成度」のみに部下の関心が向かってしまう。「目標を達成したのに、評価が低い!」などと、部下の不満をあおることにもなりかねない。

組織のリソース配分や人材育成、中期的な構想などは、個々の部下の状態から現実的な柔軟な対応をすることになるが、部下の処遇を決める人事評価は公平・公正な運用をしなければならない。つまり、その社員のいまのレベルと人事評価(等級)で求められる責任とのギャップをきちんと評価結果に反映しなければならない。その等級に求められている責任を果たしていないのに、目標達成率だけで良い点数をつけないという点に注意を払いたい。

麻野進(あさの・すすむ)
組織・人事戦略コンサルタント。株式会社パルトネール代表取締役。1987年関西学院大学法学部政治学科卒。国内系大手コンサルティングファーム、人事・組織コンサルティングファーム取締役、大手SI系コンサルティングファーム シニアマネージャーを経て現職。著書に『部下なし管理職が生き残る51の方法』(東洋経済新報社)、『ポジティブな人生を送るために50歳からやっておきたい51のこと』(かんき出版)など多数。
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