【鉄則3】改善の機会を一度は与える
「ただし……」である。その人の成長や復活を諦めるのはまだ早い。
過剰な期待は組織にとっても、本人にとっても不幸な結果を招くことになるが、周りも諦めて無視するようになると、困った部下はますます困った存在になってしまう。パフォーマンスが悪いからといって、会社はその人を特別扱いしてくれないし、人件費がかかっている限りは、「何とかうまく使ってくれ! それがリーダーであるあなたの役割だ」と言われるのだ。
ただ、期待値を下げたまま放置してしまうと、困った社員は下げてもらった期待値にも届かない状態に陥る可能性が高い。「単に能力が足りないだけなのか」「やる気をなくしたきっかけは何だったのか」「前の上司との間に何があったのか」「自信をなくしているのか」「セルフイメージが低いのか」など、パフォーマンスが発揮できない本人なりの原因が存在するはずだ。
そうなった要因を具体的に聞いたり、どうすれば改善できるかを話し合ったり、相談に乗る時間は確保しておきたい。もしかしたら今回任せた仕事が行動や態度の改善につながるきっかけになることも十分にある。
統計的なものはないのだが、企業人事の方々の話を伺っていると、上司から“ダメ出し”をされ続けている社員でも、「上司が変われば復活する社員が2割いる」という意見が多く聞かれる。2割という数字は微妙だが、求人サイトのリクナビNEXTによると「転職理由と退職理由の本音ランキング」では常に「上司との人間関係」が1位になっているように、ローパフォーマンスの原因が上司との相性の可能性も高い。
上司としては、期待値は下げたとしても、改善の可能性やきっかけについては、常日頃から意識しておきたい。
ただし、見極めは迅速にしなければならない。改善が難しいと判断すれば、任せた仕事の成功を第一に考えるよう切り替えなければならない。