ほかにも「休暇が取得できている」が前年比マイナス0.6ポイント、「OJT(職場教育)の機会がある」も前年比マイナス1.7ポイントと、それぞれ低下した。職場の余裕のなさが浮き彫りとなる結果が出た。
以上のポイント差は小さく見えるかもしれないが、調査結果から推計すると、2015年と16年の間において、業務量負荷が増大した人は25.9万人、休暇が取得しにくくなった人は71.3万人、OJTの機会が減った人は168.5万人にのぼる。
残業で補う中小企業と大企業で格差
次に、企業規模でワークライフバランスがどの程度悪化しているかについて注目しよう。残業時間についてのスコアを、従業員規模別に分析したところ、従業員1000人未満の中小企業ではマイナス、つまり「残業時間が増えている」との結果が出た。これに対し、1000人以上の大企業では前年よりも残業時間の改善がみられたという。
休暇取得は、企業規模に関わらず悪化していることから、業務負荷が増える中で、大企業では休暇が取りづらいとはいえ、残業時間を減らす方向で生産性を高めている一方、中小企業では、仕事量が増えている事態を、残業や休日出勤で対応していることがうかがえる。働き方改革がうたわれる中でも、人手不足の影響を受けやすい中小企業を中心に、業務負荷増大にどう対応するかが課題である。
制度よりも業務プロセス改革が求められる
働き方改革に注目が集まるなかでは、残業時間の削減やテレワークなど制度改訂に目が行きがちだ。しかし筆者は、働き方改革の本質は業務プロセスの改善にあると考えている。仕事を棚卸しして、無駄な仕事や会議をなくす、社外の人の力を借りる、自動化するシステムへの設備投資など、生産性を上げる業務プロセス改革を行うべきだ。
そうでなければ、今後も人手不足が続く中で、これまで行っていた仕事すら回らなくなる可能性がある。上記の調査結果は、人手不足が働き方改善の重しになっている可能性を示しているし、実際、日本の人手不足は深刻さを増している。
人手が確保できずに受注を見直す建設業界や、サービス縮小の宅配便業界など、経営に支障が出るほどの人手不足に悩む業界が、じわじわと増えつつある。その中で単純に「残業するな」「早く帰れ」といった表面的な「働き方改革」を遂行すれば、持ち帰って仕事をしたり、休日返上したりといった本末転倒の事態になりかねない。働き方改革は、仕事の効率化や生産性を高める工夫が求められている。