小規模店舗を無人店舗化する

もちろん、ホールフーズの商品情報や顧客情報なども相当に強力なビッグデータであり、これによりアマゾンは会員がリアルワールドで何をしているか、把握できるようになる。客層ごとにターゲット化したプライベートブランドの開発、さらには消費者ニーズにあわせて新しい業態を設計することも容易になることでしょう。

日本のスーパーにも同じブランドが複数の業態を展開する事例がありますが、ホールフーズにも「365 by Whole Foods Market」という小規模店舗がありますし、アマゾン・フレッシュにも受取専用のドライブスルー「アマゾンフレッシュ・ピックアップ」があります。アマゾンがホールフーズを買収することで、こうした新しい店舗業態が本格展開されていくことになるのではと予測されます。このような新しい業態のひとつの予想が、序章のなかで2022年11月の近未来予想図として紹介した「アマゾン365」リアル店舗なのです。

いうまでもなく、ホールフーズの店舗にアマゾン・ゴーのテクノロジーを取り入れることも想定されます。とくに小規模店舗「365 by Whole Foods Market」を無人店舗化するというアイデアは、早晩実現されるに違いありません。そうでなくても、人件費削減や物流、在庫管理などコストの削減が可能になり、それを消費者の還元につなげていくものと予想されます。

450店舗を2000店舗に増やす計画か

実際にホールフーズがアマゾンの傘下になってからの動きを簡単にまとめておきましょう。アマゾンは、ホールフーズを傘下企業とした当日に、最大43%という値下げを実施してみせました。スマートスピーカーであるアマゾン・エコーもホールフーズで販売されました。ホールフーズの店舗では「ホールフーズ+アマゾン」というロゴの入った看板も至るところに掲げられました。

プライム・ナウのトップページにはホールフーズのバナーが掲載され、同店舗のPB商品がアマゾン・プライムで購入できるようになりました。さらにアマゾンは、来年からホールフーズの店舗運営や広告宣伝・販売手法を刷新することも明らかにしました。450店舗を2000店舗にまで増やしていく計画をもっているという報道もなされています。

総じていうとアマゾンがホールフーズを傘下におさめたことで消費者への利便性がさらに高まり多くの競合がアマゾンへの脅威をさらに強める結果になっています。

【関連記事】
アマゾンの"法人通販"は業界を破壊するか
アマゾンは音声認識で何を企んでいるのか
時価1兆円突破「ゾゾ」だけが儲かる事情
急成長「メルカリ」にはどんな法的リスクがあるか
アパレル市場の"3分の1"が消滅した理由