もちろん、アマゾンが小売企業(Eコマース)であるのは事実です。書籍に始まり、雑貨、家電、デジタルコンテンツ。昨今では、アパレル・ファッション・生鮮食料品、プライム・ビデオに注力しています。

「最強のシステム会社」としてのポジション

しかし同時にアマゾンは、マーケットプレイスのセラー向けにFBA(Fulfillment by Amazon)という物流サービスを提供する物流企業の顔も持っています。

話を先に進める前に、FBAについて解説しておきましょう。アマゾンのサイトにいくと、販売元と発送元が分かれて記載されている商品があるのにお気づきでしょうか。販売元に、アマゾン以外の会社が記載されていたら、それがいわゆるセラーです。アマゾンは自社以外のセラーによる販売を受け入れているのです。

そして、発送元のところにアマゾンと記載されていることがあります。これはアマゾンがセラーにかわって在庫の保管から受注処理、発注業務までを代行していることを意味しています。これがFBAのサービス。購入者は他の注文と同様にアマゾンカスタマーサービスを利用できますし、出品者は「当日お急ぎ便」「お急ぎ便」「アマゾンプライム」「全商品の通常配送料無料」をふくむ、Amazon.co.jpと同じ配送サービスを購入者に提供できます。

そしてアマゾンはテクノロジー企業でもあります。クラウドコンピューティングの世界ではすでに「最強のシステム会社」としてのポジションを確立していることは、第1章でも触れたとおりです。こうしたインターネット世界で得た地の利を生かし、アマゾンはリアル世界においても「地の利」を得ています。アマゾン・エコー、無人コンビニ「アマゾン・ゴー」、ホールフーズの買収は、その2017年時点における最新事例だといえるでしょう。

「アマゾン・ゴー」と「スマート世界」

なぜ、アマゾンは現実世界に参入するのでしょうか。ここでは個別事例として、アマゾン・ゴーを展開する理由、ホールフーズを買収した理由を見ていくことにしましょう。

まずアマゾン・ゴーを展開する理由ですが、ひとつにはこれまでのテクノロジーや知見の集大成になり得るものとして、無人コンビニに期待をかけているからだと考えられます。そして無人コンビニで使われている仕組み自体を、小売り・流通のエコシステムにしようとしているからではないでしょうか。