国内のネット系ベンチャーの遵法精神を問う声が大きくなっています。1999年の創業から急成長し、2007年には東証一部に上場したDeNAは、根拠不明の盗用記事が多数あったとして医療情報サイト「WELQ」など10サイトを閉鎖しました。メディアでの露出も多い企業だっただけに影響は甚大です。
ネットビジネスは、サービスを急拡大できる一方、法的にはグレーゾーンを踏み越えているケースが少なくありません。いま金融庁や警察当局が警戒を強めているのが、フリーマーケットアプリの「メルカリ」です。13年7月にサービスを開始し、16年12月には国内のダウンロード数が4000万を突破(※1)。官報によれば、16年6月期の売上高は約122億円、営業利益は約32億円。非上場にもかかわらず時価総額1000億円を超える企業に称される「ユニコーン」のひとつと呼ばれます。
「ぱちんこ紛い」の賭博換金の場所にも
メルカリの特徴は取引の手軽さです。「ヤフオク!」などのオークションサイトは原則として期限までに価格を競り上げる仕組みのため、取引成立まで時間がかかります。一方、フリーマーケットアプリは売却価格が指定されているため、その価格に買い手がつけば即時に取引が成立します。会員登録の本人認証はスマートフォンがあればすみ、登録や出品も無料を謳うことで、サービスを急成長させてきました。
しかし取引上のトラブルも続発しています。たとえば「本人認証付き」のライブチケットやゲームデータの取引が多数行われている点です。本来は売買が禁止されている商品のため、チケットが無効になったり、データが削除されたりする恐れがあります。それでもメルカリはこれらの取引を「公認」するかのように、利用規約の一部である「ガイド」を変更したため、混乱を招いています。
この問題についてメルカリに問い合わせても、「お客様からの通報や、権利者の方よりご連絡をいただいた際には、内容を確認のうえ、法令違反があれば削除など然るべき対応を行っております」という定型の回答があるだけです。ゲーム会社やコンサート主催者といった権利者からの申し立てがなければ削除しないという方針は、盗用記事を流通させながら、著作権者からの申し立てがなければ削除しないとしたDeNAのやり方と同じといえます。
現在、国内のゲーム会社はゲームデータの取引を利用規約で明確に禁じています。その理由は、ゲーム内で得られる貴重なアイテムやキャラクターには「資産性」があり、これが売買できれば偶然によって得られるデータで多くの金銭を生むことになり、事実上の賭博行為に該当してしまうからです。これをリアルマネートレード(RMT)といいます(※2)。
メルカリはフリーマーケットの仕組みで、「三店方式のぱちんこ紛い」ともいえる賭博換金の機会を提供していることになります。確かに飽きてしまったゲームのデータを誰かに売って換金したいという需要はあるでしょう。しかし権利元の利用規約で売買が禁止されているものを、「ニーズがあるから」というだけで売買仲介するようでは、注目のユニコーンも随分黒いものです。
現状ではメルカリ内で検索をすれば、数え切れないほどのゲームアカウントが出品され、取引が成立していることがわかります。メルカリだけでなく、ほかのオークションサイトでも同様の出品はありますが、最大手の「ヤフオク!」では見つけ次第削除しているため、長くても5時間程度で削除できているという状態であることを考えると、メルカリの公認ぶりは異常ともいえましょう。