課題(3)現役世代と比べて、再就職が難しい

いったん離職した後の再就職の状況はどうか。2015年に未就業で就業を希望していた人は全年齢で1420人おり、60歳以上が710人を占める(図表5)。しかし、そのうち、2016年に仕事に就いたのは14.6%(103人)にとどまり、59歳以下(37.2%)に比べて低い。高齢未就業者が新たに仕事を得ることは、相対的にみて難しい状況にある。

いつ引退するかを自分で決められるか

今後期待されている高齢者の就業、その現状を分析した。高齢就業者は、平均的にみて、生き生き働いており、幸福度も比較的高かった。しかし、職種が限定的で、定年などの制度的な理由で離職を余儀なくされており、いったん離職すると再就職が難しい現状も確認された。

これらの分析から、定年の区切りに大きく左右されている高齢就業者の姿を想像できる。定年退職を迎えた後、限定的な仕事を求めて、厳しい再就職を試みる。高齢者の就業が「年齢に関わりなく働き続けられる」社会を実現するものならば、定年制はそれに矛盾する存在ともいえないだろうか。生き生き働く高齢者は、社会に活力をもたらす。その実現に向けて、上述の3つの課題を克服するためには、「いつ引退するかを自分で決められるか」というキャリアの自律性について、高齢者のみならず、現役世代も議論して共有するところから始めるべきだろう。

久米功一(くめ・こういち)
東洋大学経済学部総合政策学科准教授。1973年生まれ。2008年大阪大学大学院修了(博士、経済学)。2017年より現職。専門は労働経済学、行動経済学、経済政策、産業構造。多様な働き方、労働と価値観、テクノロジーと雇用などを研究テーマとする。
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