今の学校が抱える2つの問題
問題は現在の日本の教育、特に学校教育がこうしたスーパーヒーローたちを育てるのに貢献しているかどうかです。従来の平均的に伸ばせても云々という日本の教育の限界を本気で突破していく姿勢を示せないと、学校がこうしたヒーローたちを育てる、あるいは多様な子どもの特技をうまく伸ばすことにはなかなかつながらないのではないかと思うのです。
現在ある日本の学校の多くはかなり変わってきましたが、まだ大多数は教師主導型で画一的な指導という点で同じ特徴を持っています。このままでは、個々の(隠れた)才能を上手に開花させていくことは難しいのではないでしょうか。
私は平均点を伸ばすだけでなく、それぞれの個性や特性、それに育つ環境に合わせて、柔軟で多様な学びや教育があるべきと考えています。
実際、今の学校教育にうまく適応できずに不登校になる子どもたちはなかなか減りません。むしろ増えているのではないかと思われます。学校は、受験社会を勝ち抜いて「いい学校に入っていい会社に入る」ことがゴールとされた時代はもうとうに終わったはずなのに、学校がまだその体質から抜けられないでいるからでしょう。
今や中学生の間では、オリジナル動画をネットにアップさせる「YouTuber」が将来になりたい職業の上位に上がっています。ソニー生命保険の「中学生が思い描く将来についての意識調査2017」では、男子中学生の1位は「ITエンジニア・プログラマー」、2位は「ゲームクリエイター」、女子中学生の1位は「歌手・俳優・声優などの芸能人」、2位は「絵を描く職業(漫画家、イラストレーター、アニメーター)」という結果が出ました。
ランキングには、もちろん公務員、教員、会社員も入っています。ですが、これらの職業に憧れる10代の気持ちに、私はなるほどと思いました。
果たして、今挙げたようなポスト第三次産業とでも言える仕事を志向する子どもたちに今の学校は対応できているのでしょうか。時代とともに、価値観や人生の目的が変化・多様化しています。そのスピードに、大人たちも学校もなかなかついていけないというのが実情のように思えます。
今の学校にはふたつの点に問題があります。
ひとつは、先述したように、そもそも学校とは「平均的な能力の底上げをするシステム」であって、その子どもたちのそれぞれが持っている特別な、その子にひそんでいるその子なりの才能の芽を上手に伸ばして、個性的な力を育てられないこと。
ふたつ目は、古い子ども観が残っていること。育て方によっては子どもはすごい力を発揮するのにもかかわらず、彼らの可能性に対してまだまだ目が閉ざされていて、悪い言い方をすれば「子どもは子どもなんだ」というところで考えが止まってしまう。結果、それが授業のあり方、子どもたちへの接し方に表れてしまい、「年相応の学びを提供する」ことで終わっている。