銀行が取れないリスクをわれわれが取る

――銀行からの借り入れはできないのでしょうか。

銀行は主に不動産の担保価値をもとに融資の判断をしますが、弊社のクラウドファンディングでは投資家が将来のリターンをもとにお金を投じます。銀行がリスクを取れない資金需要をわれわれが取り込んでいきます。

京町家の例では、投資家の出資金は約3年にわたって運用されることになりますが、単に社会問題を解決するだけでなく、年率10%という想定利回りで、投資としても十分に魅力を感じてもらえるプロジェクトにしています。運用手数料は元本に対して2%ですが、低金利の現在、広く市場に出回っているもので、これだけの利回りを出せる金融商品は少ないのではないかと思います。

――鬼頭社長は「建築学科卒業」というユニークな経歴です。

建築学科では、デザインを行う過程で目に見えてわかる物理的な定量データだけでなく、歴史的・文化的コンテクスト(背景)を読むことの重要性を学びました。そういった考え方が今回の町家再生のようなプロジェクトに活かされているのかなと思います。

一方で、私が学生だった時代は日本で不動産証券化市場が拡大した時期とちょうど重なるのですが、資本市場を介して多額の資金が建築の世界に流れ込んで来ているのを見て、建築が持つ経済的な側面もこれまで以上に重要になっているのではと感じていました。

そんな中、大学院在籍中に不動産ファンドで1年半ほどインターンとして働く機会を得たのですが、そこでは投資という観点での建築や不動産のバリューアップに対する考え方や、グローバルな環境で投資や運用を学びました。

また、起業する直前までメリルリンチの投資銀行部門で不動産セクターのカバレッジバンカーとして働いていたのですが、その時に主幹事として数多くのグローバルオファリングに携わり、それがこれまでの経験と組み合わさって今の、クラウドリアルティの根底に流れる思想が出来上がった気がします。

――今年7月、優れた技術やアイデアを発掘するプログラム「三菱UFJファイナンシャル・グループDIGITALアクセラレータ」でグランプリを獲得しました。どこが評価されたと受け止めていますか。

こちらは建築というよりは、金融という切り口でグローバルな事業展開に挑戦していることが評価されたことが理由の一つと聞いています。今、最も可能性を感じているのがエストニアで、子会社を置いています。国が暗号通貨の発行を計画するなど、さまざまな領域で先進的なIT活用が進んでいますし、現地の法規制がこうしたビジネスを展開しやすいという側面もあります。また、EU域内にあるので、今後、欧州でビジネスを広げていくため拠点としても位置づけています。エストニア以外にもアジアや北米での事業展開も視野に入れて、日々新しいクロスボーダーの証券化スキームを開発しています。