なぜパソコンをスリープ状態にして新幹線に乗るのか

新幹線の車内は「アウトプットの時間だ」という意識が自分の中にあります。移動時は、ある意味“缶詰め状態”。乗り物に乗れば降車駅に着くまでは、当然ながらその席にいるしかありません。会社にいる時のように部下から声をかけられることもありません。そうした閉じた空間が、集中力を高めるのでしょう。

新幹線に乗り込む際には、すぐに執筆にとりかかれるように、パソコンの電源は消さず、スリープ状態にしておきます。その日に書く原稿のファイルを事前に立ち上げておけば、座席に座ってすぐに取りかかれます。パソコンの起動から始めれば、書き始めるのに2~3分はかかります。そのロス時間が私にはもったいなく感じられるのです。

執筆するテーマも乗る前にちゃんと考えておきます。徒歩や地下鉄、タクシーなどでの移動時間に大まかな構成要素を決めておけば、あとは想像力をフルに働かせながら、書くだけ。だから20分もあれば、見直しも含めて完成するのです。

アウトプットの時間の質を高めるためには、「準備」が必要なのです。これは私だけに限りません。多くのビジネスマンも、報告書や資料作成などのアウトプットを新幹線の車内ですることがあるでしょう。新聞や書籍を読んでなんらかの刺激を受けているときはもちろんですが、街を歩く、通勤電車に乗る、といった何気ない時間もそんな準備期間にできるといいはずです。

▼「短い時間&密室空間」が頭の働きをよくする

新幹線が、なぜ質の高いアウトプット時間になるのかを考えた時、「短い時間」ということもその理由のひとつだと感じます。東京―大阪間なら3時間弱。短すぎず、長すぎない。これが集中して書くのにちょうどいいのです。

私は締め切りが迫っている場合、地下鉄のホームのベンチで5分、10分座って一気に書き上げることもあります。

一方、半日以上もかかるようなロングフライトの飛行機移動では、私の場合、執筆がはかどりません。このため執筆より、原稿のチェック・校正など、それほどひらめきを必要としない「作業」を行うことにしています。

飛行機移動であれば、機内の時間よりも、飛行機を待っているラウンジのほうがアウトプットには適している気がします。離陸までの時間は短く、限られています。そうした締め切りのある時間のほうが、緊張感を保つことができ、脳がよく働くのかもしれません。

ちなみに先日、顧客の経営者15人をニュージーランドにお連れしましたが、彼らを見ていると、フライト中は本を読んでいる方が多いです。書籍から経営のヒントを得たり、経営者同士の会話の中からアイデアを得たりするようです。ロングフライトはアウトプットよりインプットが向いているのかもしれません。