育休を取得する女性が増えています。企業側も「復職の準備」には力を入れつつありますが、産後6カ月以内の「産後ケア」は手薄なのが現状です。しかし、有能な女性社員を引き留めるためには、上司などの関係者が積極的に「産後ケア」へかかわることが有効です。日本総研の小島明子氏が解説します――。

なぜ、企業は女性の産後ケアをしなければならないのか

「女性が働きやすい社会」の確立は日本経済において最優先事項です。

厚生労働省の「2016年度雇用均等基本調査」によれば、2016年度に育児休業(以下、育休)を取得した女性の割合は81.8%でした。取得率が年々高くなっていることは歓迎すべきことですが、幼い子供を持つ女性の働き方を考えたとき、問題がなくなったわけではありません。

育休からの復帰前後の女性は、仕事と家事・育児の両立に対する不安などさまざまな悩みを抱えていることが多いのです。

最近では、大企業を中心に、育休を取得した女性にできるだけ早く職場に復帰して活躍してもらうために、早期復帰祝い金の導入やベビーシッター費用の給付などの取り組みを行う例も出てきています。

ある企業では、子供が1年6カ月に達する日までに職場復帰した従業員には、早期復帰祝い金として、50万円を支給する制度を設けています。

ただし、産休前や産後のリハビリ期間(2~6カ月)に女性社員に支援を行っている企業はまだ少数です。そのような取り組みをきちんと行うことは、女性の継続就業への意識が向上するなど、企業にとっても意義があるはずです。

本稿では、企業に対して、女性の復職支援プログラムなどを提供している「特定非営利活動法人マドレボニータ」事務局次長の太田智子さんに協力をいただき、育休取得中の女性社員に対する産後ケアの必要性について考えたいと思います。

▼なぜ、企業は女性の産後ケアをしなければならないのか

太田さんは、産後には女性に3つの危機が訪れることを指摘します。

「産後は、女性の誰もが体と心に大きなダメージを負うにもかかわらず、十分なケアがされる機会がありません。『子育てが楽しめない』『パートナーとのすれ違い』『社会復帰へ意欲がわかない』といった気持ちを抱える女性が多く、その状態が悪化すると、(1)産後うつ、(2)乳児虐待、(3)産後のカップル不和、という3つの危機が訪れるリスクがあるのです」

マドレボニータが2016年に実施をした調査では、産後2週間から1年程度までの間に、女性は次のような危機的な状況だったと回答しています。

「産後うつの一歩手前だったと思う」(47%)
「診断は受けていないが産後うつだったと思う」(30%)