なぜ女性は産後、夫の愛情を感じにくくなるのか?

さらに同年に行った別の調査では、「自分の子供に虐待をしてしまうことがあったか」という問いに対して、「していないが、してしまいそうになる不安を覚えることがあった」という回答が約半数であることも明らかになっています。

また、ベネッセ次世代育成研究所の「第1回 妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(妊娠期~2歳児期)」によれば、「夫(妻)への愛情を実感する」という回答結果を経年で比べると、夫婦ともに子供が大きくなるに従って愛情を実感する率が下がっています。

夫については、妻の妊娠期は74.3%が妻に愛情を実感していますが、子供の0歳児期には63.9%まで落ちているのです。一方、妻については、妊娠期は夫と同じ74.3%が夫に愛情を実感していますが、0歳児期には45.5%にまで落ちています。産後、夫に対する評価はガタ落ちなのです。

ポイントは、夫が家事・育児などに対して協力不足だと、妻の夫に対する愛情は低下するということです。

妊娠期も子供が0歳期の時も変わらずに「夫を愛している」と実感している妻は、「愛情が下がった」という妻よりも、「夫が家族と一緒に過ごすように努力をしてくれている」「夫が妻の家事や育児・仕事をねぎらってくれる」と感じていました。

▼半数の企業が復職支援の取り組みをしていない

前述のとおり、産後の女性の多くが心と体にダメージを抱えています。さらに、育休期間中の女性は、うまく職場復帰できるかどうかという不安もあり、その精神的負担はさらに重いものだと考えられます。

育休をする女性が増えるなか、企業としても従業員の育休支援の一環として、産後ケアのあり方を改めて考える時期に来ているのではないでしょうか。

育休を取得する女性に対して、企業はどのような支援をしているのでしょうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(2015年度、厚生労働省委託事業)によれば、産休制度や育休制度を利用している女性に対して、「今後の職務や働き方などに関する面談を実施」する企業は46.1%ある一方、「特に行っていない」とする企業も41.8%に達しました。

産後の女性は精神的に不安定になりがちです。それにもかかわらず、多くの企業が大事な戦力である女性社員に「対策なし」の状態なのです。育休を取得した女性に対する企業の支援が手薄であり、そもそも「産後ケア」という取り組みまでには至っていません。