笑顔のポスターは、田舎では逆効果
ところで、なぜ候補者はポスターの顔写真を加工するのか。それは見た目が投票行動に影響を与えるからだ。
見た目にはさまざまな要素があるが、なかでも拓殖大学・浅野正彦教授が注目しているのは「笑顔」だ。15年に行われた政令指定都市の市議会選挙で、顔認証技術を使って候補者1379人の選挙ポスターの笑顔度を測定。得票率との関係を調べたところ、興味深い結果になった。
「ポスターの笑顔度は得票数に影響を与えていました。ただ、都会と田舎では影響度が異なります。投票率が低い都会の選挙区では笑顔度の影響が大きく、投票率が高い田舎の選挙区では笑顔度の影響は小さかった。都会の選挙区には無党派層が多く、見た目の影響を受けやすいのでしょう」
都会と田舎の違いはほかにもある。そもそも笑顔に対する印象が正反対だ。
「都会の選挙区では、笑顔であるほど得票率が伸びます。逆に田舎の選挙区では笑顔度と得票に負の相関があり、笑顔であるほど得票率が減る」
ニコニコした表情が好感に結びつくのは都会だけ。田舎では、むしろへらへらしていて信用が置けない政治家という評価になりやすい。
ちなみに名前の漢字をひらがなにする候補者も多い。読みやすくして有権者に覚えてもらうための策で、選挙管理委員会に通称使用申請書を提出すれば認められる。ただ、「ゼミ生が16年参院選を分析したところ、ひらがなと得票数に関係はなかった」とか。これから選挙活動する候補者は、ぜひ参考に!
(答えていただいた人=拓殖大学教授 浅野正彦 写真=時事通信社)