嫉妬してヘコんでいる時間は無駄

若新雄純さん

【山里】すごい人を見て、自分がいかにダメかという確認作業をする時間って、人生で何のメリットもないですね。

【若新】でも、そういう「確認作業の時間」って、きっとほとんどの人間にありますよね。

【山里】嫉妬してヘコんでる時間は何も生みださないから、もったいないです。自分がダメなのはしょうがない。僕はそれを燃料にして、自分が努力を続ける方向へ持っていくようにしてきました。「この人たちはこれで評価されているけれど、自分がそれ以上の評価を得るには、これとこれをやらなきゃいけないんだ」って、つらくても自分に言い聞かせます。

その変換がうまくいっていれば、嫉妬する相手がいる限りはサボらないんです、ありがたいことに。例えば、ちょっと時間がとあいた時に、ゲームで時間をつぶすんじゃなくて、テレビやライブで使えるワードを一つ考える。嫉妬の感情は、サボらないためのストッパーであり、僕を努力させる燃料だととらえるようにしています。

【若新】アメリカの研究によると、他人との比較による嫉妬の感情は誰にでも起こるものなんですが、それをプラスの感情に変えられる人と、マイナスの感情にしてしまう人がいる。ほとんどの人たちが後者だそうです。マイナスの感情というのは、「こんなやつ、いなければいいのに」と思ったり、その人を陥れようとしたりすること。つまり、「相手を下げる」方向に嫉妬のエネルギーが働くのがマイナスです。反対に、プラスの感情というのは、嫉妬の気持ちを上方修正して、「自分を上げる」ようにすること。

つまり、激しく嫉妬することが問題なのではなく、その感情をどうしていくかが問題だということです。今の山里さんのお話は、まさに嫉妬の感情を「自分を上げる」方向に向けているということですね。

【山里】そうはいっても、僕も嫉妬の塊なんで、相手を落としたい気持ちになることはあります。相手の失敗を常日頃から願っています(笑)。そんな嫉妬の塊だからこそ、圧倒的に努力するしかないと、自分に言い聞かせているんです。「相手を引き下ろそうとしている限り、相手が上だということを認めていることになる。その時間を、自分の成長のために使わないとダメだ」って。

【若新】さらにその研究では、どういう人が嫉妬の感情をマイナスではなくプラスの方向にできるかも明らかにされています。それは、「このままの自分が好き」だと思える人。山里さんが、競争の激しいお笑いの世界で、うずまく嫉妬の感情を努力に生かせているのは、はやりの言葉で言えば「僕はありのままでいい」と思えているからではないかと思うんですが、いかがですか。

【山里】いやぁ、そうなんですよね。こんな人間ですが、僕はむちゃくちゃナルシストです。生まれ変わったら――こう言うとベタですが――もう一回このままの自分でいいと思っています。