CASE4:資格をとったら、同期から嫌がらせが始まった
●Sさん(36歳・男性)
ある資格をとったSさん。すると同期の男性から、「資格をとったからといって仕事に直結しない」「資格の勉強をする暇があったら仕事をするべきだ」などの嫌みが始まった。
Sさんは、資格取得をきっかけに、同期の男性社員からさまざまな嫌がらせを受けるようになった。Sさんが勤めていたのは急成長中の若い企業で、やる気さえあれば誰でも重要な仕事に抜擢してもらえたためSさんは発奮。働きながら、ある資格を取得した。ほとんどの人は「えらいね」「がんばってるね」「体壊さないでね」という反応だったが、その同期社員は、「資格をとったからといって仕事に直結するわけじゃない」「資格の勉強をする暇があったら仕事をするべきだ」などと嫌みを言うようになったのだ。
その男性社員は2歳年上だったがSさんと同じ転職組で、同時期に入社したという意味での「同期」。最初のうちは「お互いがんばりましょう」と飲みにいったり、仲良くしていた。でもSさんが頭角を現し、現場の人たちや社長から可愛がられるようになると、彼の態度が変わってきた。はじめは稚拙な嫌みを言うだけだったのが、手の込んだ嫌がらせをするようになってきたのだ。Sさんがタバコ部屋で5分休憩していたら「1時間もサボっている。残業代泥棒だ」。直接Sさんを知らない人に、「あいつはこんなやつだよ」とあることないことを言う。女性社員に「Sはいつも◯◯ちゃんの胸ばっかり見てるよ」などと吹き込む。
またSさんあての電話をその男性社員がとると、伝言を伝えてくれない。ふつうは伝言メモを机の上に置いたり、付箋を貼ったりするが、彼はそれをせずに、メモをSさんの机の下のゴミ箱に入れるようになったのだ。つまり「俺はちゃんと置いたよ。おまえが自分で間違えてゴミ箱に捨てたんだろ?」と言えるようにしておくというわけだ。
もちろん飲み会にも声をかけないし彼が幹事をする会は、必ずSさんの都合の悪い日に設定する。
「出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない」という。Sさんは「出すぎた杭」になることを決意した。その後、さらに7つの資格を取得。寝る間を惜しんで仕事に打ち込んだ結果、同期は異動で北海道に飛ばされ、Sさんは現在、コンサルとして独立している。
▼解説
なるべくなら人の妬みは買わないほうがいいが、完全に封じ込めるのは不可能だ。心理カウンセラー・塚越友子さんは、「成功したいなら、ある程度妬まれることは覚悟したほうがいい」とアドバイスする。妬みは相手が一方的に抱くもの。自分は悪くないのだから、放っておけばいい。
結局、万人に好かれることなどありえない。仮に誰かに嫌われたとしても、よくあることとして受け流し、嵐が去るのを待つのが得策のようだ。
Sさんが「出すぎる杭は打たれない」と一念発起し、仕事の結果を出し、嫌がらせを打ち消せたのは心理学的に理にかなっています。周囲の人と比較して、自分のポジションをいつも確認していて、あまりにも近しい人が成果を出していると、自分が傷ついてしまうので、相手との心理的距離を取ろうとすることから、嫌がらせは始まります。手の届かない人間だと諦めると、嫌がらせは終わるのです。Sさんの職場は、Sさんの仕事ぶりを評価し、足を引っ張った同期を左遷したところから、正常な組織だったことにも、救われましたね。