CASE3:なぜ? 配属早々、仕事の改善案を提案したのに
●Yさん(38歳・女性)
女性ばかりの職場でグループごとにリーダーが8人いたが、Yさんはそのうち5人から無視されるように。きっかけは配属早々、彼女たちの仕事のやり方を批判したことだった。

Yさんは女性の集団から無視されるようになってしまった。Yさんの職場は80人中75人が女性で、管理者は不在。その代わりグループごとにリーダーが8人いた。Yさんもリーダー候補としてその職場に配属されたが、その8人のリーダーたちのうち、5人から無視されるようになってしまったのだ。

写真=AFLO

きっかけは、Yさんが配属されてまだ2~3日目に、注文実績の数え方に間違いがあることに気づき、それを指摘したこと。また彼女たちの仕事の組み立て方について、「もっと先を見越して、こうしたほうがいい」というように、何度か意見を言ったことだった。通りすがりに「仕事もろくにできないくせに」とボソッとつぶやかれ、「あ、私のことだ」とピンときた。

やがてYさんは彼女たちが自分に素っ気ない態度をとっていることに気がついた。話しかけても返事がない。「聞こえないのかな?」と思って重ねて話しかけると、「はい」「うん」「そう」など一言だけで終わる。「嫌われているんだ」と気づき、仕事中に泣きそうになってしまった。そんな状態が2~3カ月続いたが、「あんなくだらない人たちと同じレベルになってたまるか」と思い、こちらから普通に話しかけるようにした。たとえばロッカールームで顔を合わせれば、「今夜はスーパームーンなんだって」などと他愛ない世間話を振る。もちろん返事は「ふーん」だけ。でも「表面上だけでも、トゲトゲしなければもうそれでいい」と開き直り、1年くらい同じ態度を貫いた。結局その部署は会社の都合で仕事が減り、他部門に集約されて解散。

Yさんと関係の悪かった人たちは解雇され、いまでは一人も残っていない。

▼解説

このように無視されるのは決して愉快なことではないが、男性が男性(特に上司)に嫌われると、昇進や昇給などの待遇に露骨に響いてしまうのが怖いところだ。また同期で目立って出世すると、周囲の妬みを買うおそれも出てくる。もっともこれは厳密にいえば「嫌われる」ということとは違う。

「人間は常に自分と他人を比較しながら生きています。自分とあまりにもかけ離れた人とは比較しても不快になりませんが、同性、同世代、同期入社など共通点があると、つい比較してしまう。そしてその相手に自分よりも優れたところがあると、場合によっては妬み、抑うつ、憤慨などの感情が生まれる。その感情を処理するために、相手と心理的な距離をとろうとするのです」(心理カウンセラー・塚越友子さん)

▼塚越さんのアドバイス
職場とは絶対的な正しさではなく、それぞれの職場ならではの「ローカルルール」で動いています。Yさんはそれを無視して、新しい職場の仲間として受け入れられる前から、自分のやり方が正しいという主張を繰り広げてしまった。これでは嫌われるに決まっています。
実はこの手の相談はとても多く受けます。組織のルールをまず見ましょう。自分のルールとは違っても、それを否定、批判するのはNG。「自分の考えもひとつの仮説にすぎない」と一歩引いて職場を眺めれば、状況が理解できるのではないでしょうか。