酒飲みに飲みすぎるなと言ってもムダ

すでにおわかりの通り、このケースで「お酒のやめ方」をコンサルティングしても何も問題は解決しません。お酒は現実逃避で自分を休める手段なのです。もしお酒をやめられても、Aさんの場合は、ストレスのはけ口を求めて、パチンコなどのギャンブルに移ってしまう恐れがあるように思えました。

「お酒を飲み過ぎてしまう」。今回の悩みの本質(クリティカル・イシュー)は、実は「どうすれば上司からの依頼納期と質を担保できるか?」「なぜ、納期が遅れ、質のズレが起きるのか?」にあったのです。

このAさんの場合、より完成度の高いものを目指したいという上司の気持ちを尊重しながらも、やんわりと自己主張するなどコミュニケーションを工夫することが解決につながりました。

まず、短い納期での依頼を安請け合いせず、他に抱えている仕事があることなどを、それとなく伝える。上司が「合格点」とする質のイメージをできるだけ具体的に聞き出す。作業の途中で、途中経過を報告して、上司の感触をうかがって仕事の仕上がりを微調整する。

そうした対策を打つことで、ストレスを減らすことができました。これまでは上司からおりてくる仕事は、あとで必ずダメ出しされることが目に見えているだけにかなり憂鬱で、作業を始めるのも遅れがちでした。あえて積極的にコミュニケーションしたことで、心の負担も小さくなったようでした。

英語学習 3カ月続けていたのにやめてしまう理由

ケース2:「英語学習が続かない」
B子さん(35歳・女性・事務系管理職)

●悩みの声

「仕事で英語を使うことがあります。毎日1時間の英語学習を続けようと頑張っていますが、英語学習を始めてから3カ月ほどたつと、成長度や上達度に停滞感をおぼえ、“自分はセンスないな”と嫌になってやめてしまいます。数年来、こんなことの繰り返しで、英語力はほとんど向上していません。どうすれば続けられるでしょうか?」

◎筆者の解説

「どんな時に、やめたくなるのでしょうか?」と聞くと、B子さんは「ネイティブ・スピーカーとの会話で意味が通じないとき」や、「聞き取れない単語が多いとき」だと言います。自分なりに懸命に勉強している。でも、伸び悩む。結局、自分は英語のセンスがないんだ、と落ち込み、そうした自己嫌悪から英語と向き合えなくなるというのです。

ここでのクリティカルイシューは、英語のセンスの問題ではありません。「自己嫌悪によるダメージをいかに減らせるか?」にあるのです。

自分に厳しすぎることが続かない原因?

B子さんが自己嫌悪に陥る背景には、過剰な完璧主義がありました。聞けばB子さんは、英語に限らず仕事においても超完璧主義で、社内の会議資料の「てにをは」も入念にチェックしますし、日に300件来るメールもすべて目を通して見落としがないようにいつも気を張っていました。結果として残業も多くなっていました。

「そもそも英語力は本当に高まっていないのでしょうか?」

私は素朴な問いかけをしました。何を根拠に英語力が上達していない、と判断したのか、実はB子さん自身の認識も明確ではありませんでした。話を聞いていると、ネイティブに近い上級者と比較する傾向があることがわかりました。超完璧主義者のため、やるからには「てっぺん」を目指す、という癖があるのかもしれません。そこで、日々どれくらい勉強しているのかを知るため、エクセルに学習量と時間を記録することにしました。

すると、勉強時間の累計や進捗度が「見える化」されたことで、自分自身の努力と成長を確認することができ、自己嫌悪に陥ることは劇的に少なくなりました。

その結果、モチベーションを維持することができるようになり、英語学習も続くようになりました。さらに仕事でも過剰な完璧主義がなくなり、余計な自己嫌悪による落ち込みが大幅に解消し、メンタルが安定するようになりました。「自分はやるべきことはやっている」。仕事においてもそうした自己承認ができるようになったようです。