年収へのこだわりはあっても、三高がもてはやされたバブル時代と比較すれば条件は緩和され、「これだけ不況だから正社員ならいい」と妥協する女性も増えているという。しかし、頼りになる相手と結婚したい、あらゆる面で自分より上でいてほしいという女性側の依存意識は根強く残っている。さらに、今の30代女性は、就職氷河期を経て、仕事で苦労してきた経験を持つ。「もう苦労はしたくない」という思いから、人生を好転させるチャンスとして結婚に期待を寄せる人も少なくない。

「相手の学歴や年収が高いほど、ドラマチックな逆転劇になる。その期待が大きいと、相手が高卒とわかるだけで気持ちが冷めてしまう。男性がそこから挽回するのは大変なんです」(水野さん)

こうした背景から、女性側の選択眼はシビアになり、男性に対して学歴や経済力はもとより、自分を楽しませてくれるコミュニケーション力や、頼もしいリーダーシップも併せ持つことを要求してしまう。女性側の期待値が高すぎるだけに、その煽りを食った男性が恐れをなし、息切れしているのが現実のようだ。

ところで、結婚相手に望む条件として「同じ価値観を持っていること」を挙げる人は多い。その判断要素の一つに、学歴を含めると反発を覚える人もいるが、実は理にかなっている。学歴は、社会に出るまで自分が歩んできた歴史という側面もあるからだ。その中には、周囲の友人関係や家庭環境、両親から受けた教育なども含まれる。それが、自らの価値観に影響を及ぼしている事実は否めない。

<strong>「早稲田より下は滑り止めにもしないので、よくわかりません」<br></strong>橋本佳奈(31歳)●婚約中●東京大学大学院卒●年収900万円●会社員(金融系)
「早稲田より下は滑り止めにもしないので、よくわかりません」
橋本佳奈(31歳)●婚約中●東京大学大学院卒●年収900万円●会社員(金融系)

その顕著な例が、一流大卒同士で結ばれるケースだ。2009年10月に結婚を控えている橋本佳奈さん(仮名)は、東京大学大学院出身の31歳。お相手は、同じ大学の1年先輩にあたる。

研究者として大学に勤務する婚約者は、学歴は申し分ないが、年収は心もとない。金融系企業に転職した橋本さんのほうが、彼の約3倍の収入を得ている状況だ。

「企業に勤めれば、何倍も年収が増えるのに。男の選び方を教えておけばよかった」と母親は嘆いているらしいが、転職前は自分も研究者だったので、事情は心得ている。自分の仕事に誇りを持ち、研究者として成功したいという夢を追う彼の姿に惹かれて、押し切った。

「しばらくは金銭面で私が支えることは覚悟しています。できれば、精神的にも支えていけたらと思っています」