玉田は8人の部下にそうやって声をかけ、率先して外回りに出た。「これからどうなるんだ」

「売るタイミングを教えてくれなきゃ困るよ」……。顧客は次々と怒りや不満をぶつけた。なかには、3時間以上もグチを零し続ける顧客もいた。それでも玉田は、反論せず、ひとつひとつの言葉に耳を傾けながら現状を説明した。顧客もひとしきりぼやくと「玉田さんにいっても仕方ないよな、次は頼むよ」と態度を軟化させるのだった。

いくら営業マンを責めても損失を補填してくれるわけではない。だが、心を許した玉田には、やり場のない本音を聞いてほしかったのだろう。その証拠に多大な損失を被っても、玉田との取引をやめるといった顧客はひとりもいなかった。

玉田は、営業を大学時代に取り組んだアメリカンフットボールになぞらえた。玉田のポジションは、ディフェンスバック。ピンチのとき、真価を問われる最後の砦だ。ピンチに備えるクセがついたのはアメフトのおかげかもしれない、と玉田はいう。

「今は、攻めるのが難しい時期。新たな商品をお客さまに案内するより、現状を理解してもらおうと訪問を続けています」

次のチャンスを待ち、玉田は、“ディフェンス”の営業を続けている。今、顧客にとって、玉田が信頼できる最後の砦なのだ。(文中敬称略)

※順位は編集部調べ

(水野浩志=撮影)