【塩田】2度目の安倍内閣は、安保法案成立後、どちらかというと、具体的な政策目標も明確ではなく、長期政権下で中だるみ、弛緩が目立つという感じもします。
【蓮舫】私たちの追及や指摘が世論に響かなかった面もありますが、旧民主党と旧維新の党が一緒になって民進党をつくり、衆議院で 100議席に近い数がまとまりました。予算委員会での質問時間がかなり確保できて、南スーダン派遣の自衛隊の日報の問題、文科省の天下り、森友学園疑惑などで力を発揮できた。野党を経験すればするほど質問能力は高まります。成果が今、つながり始めていますが、私はこのつながりを地道に続けるべきだと思います。
【塩田】安倍首相はアベノミクスを掲げてきましたが、安倍内閣の経済運営については。
【蓮舫】評価はできません。金融緩和を推し進めましたが、4年半たっても実体経済は動かなかった。安倍政権は、この4年間の税収増について、アベノミクスで法人も豊かになり、消費も伸びたと言っていますが、最も寄与しているのは消費税で、7兆円増えました。野田内閣で決めた税率引き上げの成果です。税収増を自画自賛するのは謙虚な態度ではないと思います。
安倍首相は「3本の矢」を唱えましたが、今や3本の矢があったかどうかも定かではない。的もなくなった。矢が届かないのではなく、実は射られてもいないと思う。「第2の矢」の財政出動も、どこに出動したのか。結果として国民を豊かにはしなかった。だから、物価が上がっても賃金が下がったら年金が下がるような法案を強行採決する。介護サービスの利用者負担割合を拙速に引き上げる法案を強行採決で決めています。結果と自画自賛の言葉の矛盾を許してはいけない。
いつかきた道という危機感
【塩田】「第3の矢」の成長戦略がアベノミクスの成否を左右すると言われてきました。
【蓮舫】見えないんですね。農林水産品の6次産業化や外国人観光客のインバウンド効果について胸を張って強調していますが、始めたのは旧民主党政権です。安倍政権が独自に始めたものは何もない。民主党政権の焼き直しです。私たちは「3本の矢」は間違っていると力強く言わなければなりません。安倍政権は、都合のいいときは自分たちの継続性を口にして、都合の悪いときは私たちを批判する。ご都合主義は国民として残念です。
【塩田】安倍首相は「経済再生」を唱えてきましたが、狙いは別のところにあり、好調経済で長期政権を築いて、在任中に悲願の改憲の実現を、と考えていると見て間違いありません。5月3日には自ら独自のメッセージを発し、改憲に強い意欲を示しました。
【蓮舫】政権維持のツールとして経済をうまく利・活用したと思います。実際、スローガンは1年単位でくるくる変わりました。金融緩和政策を打ち続ける一方で、安保法案の強行採決です。憲法解釈を一方的に変更し、11本の法案を1本に束ねて集団的自衛権を行使できるようにしたのは、平和憲法を持つ国のトップとして、憲法を冒涜する行為です。
それでいて、予算委員会での質疑では憲法についていっさい答えず、「憲法審査会で議論を」と言う。憲法審査会は自民党と公明党の都合で開かれたり、閉じられたり、開かなかったりです。集団的自衛権で立憲主義を踏みにじり、今度は治安維持法ならぬ共謀罪です。言っていることと、やっていることがあまりにも違う。権力が強くなればなるほど、安倍さんの下で憲法改正をすれば、行き着く先はいつかきた道と危機感を抱いています。