働き方改革、農業改革の構造改革は進むのか
経済最優先を掲げる安倍晋三首相が「アベノミクス加速国会」と名付けた臨時国会が9月26日、開会した。8月に発足した第3次安倍再改造内閣は、事業規模28兆1000億円の経済対策を裏付ける2016年度第2次補正予算案をはじめ「未来への投資」を前面に、アベノミクスのリセットで「道半ば」(安倍首相)にあるデフレ経済からの完全脱却を狙う。
しかし、頼みの綱だったアベノミクスの「第1の矢」である金融政策は、日本銀行が先の「総括的検証」でデフレ脱却への短期決戦に事実上“白旗”を揚げたばかりで、アベノミクスは“自壊”へのデンジャラスゾーンに突入しかねない。
安倍首相は臨時国会の所信表明演説で、働き方改革、農業改革での構造改革を通じた未来への投資を経済成長のエンジンに据え、「一億総活躍社会」の実現を力説した。しかし、それこそがデンジャラスゾーンへの扉を開くことになりかねない。
なぜなら、今回のリセットを含め3年10カ月を迎えるアベノミクスの「3本の矢」で最も期待されながら後手に回ってきたのが「第3の矢」に位置付けた経済成長を促す成長戦略にほかならないからだ。規制緩和と構造改革は生温く、その結果、日銀が9月21日に実施した総括的な検証は、むしろ成長戦略を中心にアベノミクスそのものに総括検証を突き付ける展開になりかねない。
しかも、安倍首相が「非正規という言葉をこの国から一掃する」と息巻く働き方改革で掲げた「同一労働同一賃金」や最低賃金底上げの実現は口で言うほど容易くはない。その意味で欺瞞に満ちた意思表示に映る。