アベノミクスの総括検証の必要性

さらに、官邸主導で乱立する会議による弊害への懸念も、安倍政権に対する不信感に輪をかける。実際、目玉政策に位置付けた働き方改革については、主導する担当相と働き方改革実現会議を創設したほか、7月に解散した規制改革会議を衣替えし、新たに規制改革推進会議を立ち上げた。

また、成長戦略の司令塔となる未来投資会議も設け、さながら政府会議の“集中豪雨”といったありさまだ。重複する政策課題を各会議がそれぞれ屋上屋を重ねて議論すれば、その先行きは実効性を欠く成長戦略にもなりかねない。

安倍政権によるこれまでの成長戦略を辿れば、訪日外国人観光客によるインバウンド消費の拡大やアニメーションなど日本ブランドを売り込むクールジャパン戦略の加速といった“得点”が稼げる領域にはこれ見よがしに攻め込んだ。これに対して、痛みを伴う肝心の「岩盤規制」に穴を空けるドリルの刃は鈍る一方だった。これを踏まえると、アベノミクスのリセットによっても成長戦略が必ずしも過去の轍を踏まないとは言い切れない。

一方、「第2の矢」である機動的な財政出動も、いかにも大盤振る舞いの感は否めない。8月2日に閣議決定した経済対策は景気浮揚への乗数効果が薄れる公共投資を拡大すると同時に、「第2の予算」と呼ばれる財政投融資を積極活用し、事業規模を安倍政権下で最大となる28兆円超にかさ上げした。さらに、それに沿う補正予算案にリニア中央新幹線の開業前倒しや大型フェリー向けの港湾整備の費用を計上するなど緊急性を要しない予算措置が目に余る。この点には野党や識者らに「補正予算の性格を逸脱する」との批判もある。

これでは、19年10月に消費税増税を先送りしながら財政再建の道筋を示さず、社会保障制度に対する国民不安は増すばかりだ。その意味からも、欺瞞とポピュリズム(大衆迎合)に染まる安倍政治が進めるアベノミクスは、リセットよりはむしろ総括検証が求められそうだ。