「遺留分封じ」はどこまで有効か
相続税対策で行われる養子縁組。しかし、相続に詳しい長谷川裕雅弁護士は、「相続税の課税回数を減らす効果はともかく、基礎控除額の増額については、一般に考えられているほど節税効果は大きくありません」と指摘する。
「民法上は養子縁組できる数に制限がないものの、相続税の基礎控除額を計算するうえでカウントできるのは実子がいる場合、養子1人まで。相続税法が改正され、基礎控除額への加算も1000万円から600万円に下がってしまいました。つまり縁組しても600万円×税率分しか税金は安くならないのです」
ならば縁組は労多くして功少ないだけなのか。長谷川弁護士は「多くの場合、真の目的は、きょうだいの遺留分封じ」と明かす。
遺留分は、故人の遺言内容にかかわらず法定相続人が最低限相続できる額を指す。たとえば法定相続人が妻と長男、次男なら、長男、次男とも遺留分は8分の1。次男が放蕩息子で遺産を分け与えたくなかったとしても、遺産の8分の1を持っていかれる。
「そこで養子縁組の出番です。長男の嫁、孫2人を親と養子縁組させれば、法定相続人が3人増えて、次男の遺留分は20分の1に減ります。遺留分は相続税法でなく民法によって規定されているので、養子縁組の数に制限はありません」
遺留分を減らされたきょうだいは当然、納得いかない。
「実態を伴わない形式だけの縁組では無効になるおそれがあります。養子縁組するなら、親子で同居したりお金を渡して扶養したりするといった実態が必要です」
(図版作成=大橋昭一)