日本電産 永守重信社長(写真=gettyimages/Bloomberg)

困難から逃げるとどうなるか?

永守社長から私宛に届いた何百通ものファクスの中で、いつまでも忘れていたくないと思う言葉の1つがこれです。

「君な、向こうから困難サンがやって来たとしよう。困難サンが、向こうからトコトコ、君のほうにやって来たと考えてみなさい。君としては『嫌だ嫌だ』という気持ちだろう。困難サンから逃げたいと思うだろう。で、逃げる。横に避ける。そうしたら、困難サンはすーっと脇を通りすぎていくだろ。

その瞬間、通りすぎる困難サンの背中をちょっと見てみたら、君、背中には解決策というリュックを背負っているではないか。だから、困難から逃げるということは、結局、解決策も逃がしちゃうということなんだよ」

これが永守社長から聞いた解説です。

赤字企業を再建するには、とにかく大変な困難を伴います。ゼロどころかマイナスからのスタートなのですから、困難の連続です。私自身も日曜日も会社に出て、誰もいないガランとした事務所で1日中データを眺めながら、資金繰り対策として、何かヒントになるものはないかと、必死に考えていました。そんなときに届いたファクスの言葉です。

人間、追い込まれたときには、なかなかポジティブな思考には向かいません。事務所に届いたファクスの中のこの言葉に、じっと目を凝らします。すると、私の心の中でもう1人の私が、「困難から逃げてもどうせ解決策がないなら、いっそのこと困難とがっぷり4つになってみろ。もっと自分に自信を持て」と言っているのが聞こえます。

よし分かった。明日もう1度、幹部を集めてゼロベースで検討会をやってみよう。心に1本、筋が通った気がして、夕闇が迫る事務所を後にすることができました。