長生きするのは「健康第一」より「仕事第一」

さらにいえば「健康」より「仕事」を選ぶ人のほうが長生きしている。

我々は、宮城県大崎保健所管内の40歳から79歳までの国保加入者5万名を対象に、生活習慣などのアンケート調査を1994年に実施して、それ以降の死亡生存状況を追跡している。調査のなかで、次の質問をして、12年後の死亡率を調べた。<あなたが日常生活において大切だと思うものは何ですか。次の中から、大切だと思われる順に3つ選んで下さい仕事、家族、健康、友人、金銭、趣味、名誉、地位、余暇、その他>

最も多かった答えは「健康(89%)」で、次いで「家族(74%)」「仕事(40%)」「金銭(39%)」だった。このうち死亡率が最も低かったのは「仕事」と答えた人たちで、回答者2万200名のうち2126名が死亡した。死亡率は11%である。一方、死亡率が最も高かったのは「名誉」と答えた人たちで、80名のうち22名が死亡した。死亡率は28%。実に2倍以上の開きがあった。

なぜこれほどの格差が生じたのか。理由はまだわかっていないが、金銭や地位・名誉よりも、充実感・やりがいのほうが、健康と寿命に好影響をおよぼしているのかもしれない。

親しい友人は「3人」で十分

充実感ややりがいをもつには、どうすればいいのか。これは豊かさの代償なのかもしれない。かつて人々が貧しかった時代は「地縁」「血縁」で助け合わなければ生きられなかった。社会が豊かになるにつれて、個別化し、孤独でも生きられるようになった。

しかし人は自分一人の心がけや努力だけで健康になれるものではない。それぞれの属する地域、職場や家庭での人間関係・信頼関係も、自分自身の健康に大きな影響を及ぼしている。

米ハーバード大学のクリスタキス教授らは「幸福は伝染する」という研究結果を発表している。米国ボストン郊外のフラミンガムという町の住民5124名を対象に、1971年から2003年までの間に9回の調査を行った。

ある時点の調査で家族か友人が幸せな場合に、不幸せな人が次の調査(約3年後)までに幸せになる確率を調べたところ、16%も増えることがわかった。伝わりやすさは近親度よりも距離が大事であることもわかった。遠くの兄弟姉妹が幸せでも影響はなく、隣人が幸せな場合は30%以上も幸せになる確率が高まった。

興味深いのは、幸せな人たちに囲まれていると幸福になる確率は上がるが、その数が3人以上になると、いくら増えても確率は変わらない点だ。そんなに友人を増やす必要はない。2人か3人でいいから、その人たちと幸せを分かち合える関係をつくれればいい。私にはそういっているように思える。

東北大学大学院 医学系研究科 教授 辻 一郎
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授。1957年、北海道生まれ。83年東北大学医学部卒業。2002年より現職。著書に『健康長寿社会を実現する』(大修館書店)、『病気になりやすい「性格」』(朝日新書)などがある。
(構成=山田清機)
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