なぜ「名誉」「地位」にこだわる人は長生きできないのか
現代社会はストレスであふれている。そしてストレスは、心身の両面でさまざまな病気を生む。たとえばストレスは交感神経系を刺激するため、心臓に負担をかける。免疫機能を低下させるため感染症も起こりやすくなる。不眠や不安、うつ病の原因ともなる。まさに「ストレスは万病のもと」なのだ。
ストレスの原因はさまざまだが、同じ出来事でも受け止め方は個人差が大きい。楽天的で前向きな人と、悲観的で悔やみがちな人では、ストレスの受け方も異なる。その違いを生み出しているのが「性格」である。
「性格」とは、人間の感情や意思のパターンである。そのうち感情面に着目したものを「気質」と呼ぶ。気質とは、人が刺激にどう反応するかを見たものだ。「根が明るい」「外交的」「負けず嫌い」「のんびりしている」……。こうした気質によって、その人の行動や意欲が形づくられる。気質とは性格の中核をなすものだと考えられている。
これまでさまざまな研究から、特定の病気については「なりやすい性格」があることがわかっている。気質は、遺伝的(先天的)に決まっている要素が強く、生涯を通じて変わりにくい(安定的)と考えられている。だから性格も変わりにくい。自身の性格を知り、その性格と折り合いをつけることが、健康な長生きの秘訣になる。公衆衛生学の最新の研究成果を紹介しよう。
高学歴で頭のいい人はボケにくい
老後の心配事について「認知症」をあげる人は多いだろう。厚生労働省によると、85歳以上の有病率は27%。つまり4人に1人が認知症なのだ。
認知症のうち、最も多いのがアルツハイマー型認知症である。国際アルツハイマー病協会によると認知症全体の50~75%を占める。次いで多いのが血管性認知症で20~30%とみられている。
この2つは症状の進行に違いがある。血管性認知症は男性に多く、一部の記憶は保たれる「まだら認知症」が特徴だ。一方、アルツハイマー型認知症は女性に多く、脳全体で病変が進行するため、記憶力や生活能力が全体的に低下していく。麻痺などの機能障害がないのに、日常生活ができなくなる。