「○×年前の低水準」「△×年以来の赤字決算」……。
業界の指標となる数値や個々の企業業績が発表されるたびに、こんな報道が躍る。経済や企業活動の水準は、どの時代まで後戻りするのか。バブル経済崩壊時か、円高に揺れたプラザ合意、それともオイルショック時か……、まさか第二次世界大戦直後のレベルまで落ちることはないだろうが、とにかく今回の不況は深刻かつ大規模である。自動車や電機など日本の基幹産業を中心に、輸出型企業ほど深手を負ったのが特徴。グローバル企業ほど、2002年以降、BRICsなど新興国も加わって急速に伸びた世界経済の追い風を受けていた。
ユニクロを展開しているファーストリテイリングや家具のニトリ、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド、コンビニのローソンやファミリーマートなど、好調組も存在する。いわゆる内需型企業だが、それも限られる。
現在、3月末に決算期を迎えた企業の業績発表が相次いでいるが、前半の貯金が含まれている年度成績より、09年1~3月の数値に注目が集まる。そこに上向きの兆候が読み取れるか否か。
不況時には企業の合従連衡が活発化する、大買収時代でもある。生き残り競争が激しさを増せば増すほど、企業は事業の「選択と集中」を迫られ、合併・再編が進むことは過去の歴史が証明している。
わずか10年前のことだが、1997年の北海道拓殖銀行、翌98年の日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の経営破綻で、日本の危機は深刻化。その出口が見えない99年に、日産自動車がルノーとの資本業務提携に踏み切った。その数年後に、みずほフィナンシャルグループ(FG)や三井住友FGが誕生している。最近の百貨店の相次ぐ合従連衡は、まさに企業存続を目的としたもの。長く不振にあえいでいた三洋電機もパナソニック傘下に入る予定だ。
攻めの姿勢から買収を手がけるケースも多い。07年4月、JT(日本たばこ産業)は、たばこ世界大手の英ガラハーの買収手続きを完了させたが、当時の為替レートで約2兆2000億円の超大型買収だった。ビール・清涼飲料に加えて医薬品も展開するキリンホールディングス(HD)はM&Aで協和発酵キリンをスタートさせている。さらにビールや飲料では、豪州、フィリピンでM&Aを実施。それに対して、サントリーはニュージーランドで買収を手がけ、アサヒビールは豪州における買収と中国のビール会社への出資を実行している。
今後、世界規模での再編が起こる。今何が起こり、これから何が起きようとしているのか。