「すごい納豆」が花粉症の症状を和らげる!?

この実験というのは本当に多様で、動物や人を対象に行っていったという。人に対しては、たとえば花粉症の症状がある50人を対象に、そのうちの半数には1日1パックの納豆を10週間続けて食べてもらい、残りの半数には同じ期間まったく納豆を口にさせない、といったテストを行った。その後、鼻アレルギー診断ガイドラインに基づいて得られた情報を解析。すると……、摂取4週間ほどで「花粉症の症状が和らいだ」という人が結果的に多かったというのだ。

研究所で重ねられる会議。

「タカノフーズでは2000種以上の納豆菌の採取に成功し、保有しています。そのなかでも『903番目』に登録された菌が免疫力の高い納豆菌だったのです。商品名になっている『S-903』の頭文字のSは、納豆菌の学術名(Bucillus subtilis=枯草菌)と健康をサポート(Support)するSから名付けました」(小林氏)

免疫力を高めるという「S-903」だが、花粉症の緩和以外には、どんな効果が期待されているのだろうか。

「インフルエンザや通年性アレルギー性鼻炎への影響を確認した実験でも結果を得ることもできました。花粉症に加えて、それらの症状で困っている人の助けになればいいなと思っています」(小林氏)

東北地方などには、古くから『風邪のひき始めに納豆汁』という生活訓が伝えられている。この言葉が示すとおり、納豆は従来、『なんとなく身体にとってよいもの』というイメージが付帯されてきた。しかし、だ。

「納豆が身体によい、と断言できるような科学的な証明は、まだ十分になされていないというのが正直なところです。そこで我々が『免疫力を高める』をキーワードにして研究を進めることで、納豆は本当に健康によいのだと立証できたらいいなと。それが、研究開発のモチベーションになっていました」(小林氏)

現段階では、納豆に含まれている食物繊維が腸内環境を整え(プレバイオティクス)、ねばねば成分であるレバンと納豆菌が、腸内の免疫細胞に働きかける(プロバイオティクス)……という大きく2つの働きが納豆に認められつつある。それにより、納豆がプレバイオティクスとプロバイオティクスの両方の機能を備えた「シンバイオティクス」という食品である可能性がわかってきたそうだ。

なお、納豆が花粉症に効果を発揮するメカニズムを簡単に説明すると、腸にはウイルスや細菌といった有害物資の侵入をブロックする免疫細胞が身体全体の60~70%も存在しており、納豆菌はこの免疫細胞を活性化させる役割を果たす、という寸法。最近では、免疫細胞のひとつである樹状細胞が、細胞内に納豆菌を取り込むことにより免疫機能を高めることがわかってきたという。

そんななか、納豆菌S-903は2002年に発見され、同社では2005年より研究を開始。しかし、そこから実際に商品として完成するまでには、かなりの年月を費やした。

「S-903菌を使った商品を開発することは決まっていたのですが、それを使ったところで必ずしも美味しい納豆になるとは限りません。商品として世の中に出す以上、味にもこだわらなければならず、それを踏まえて研究を重ね、ようやく納得のできる商品ができたのです。その結果、12年という歳月がかかってしまいました」(小林氏)

12年のときを経て送り出された「すごい納豆 S-903」。はたしてどんな味がするのか、とても気になった記者は、さっそく店頭で購入して食べてみた。