ジョージタウン、ハーバード両大学の修士号

もう一つ指摘しなければならないのは、バノンの能力を非常に低く見る向きが多いが、そんなことはないということだ。

実はバノンは、ジョージタウン大学とハーバード大学の修士号(安全保障、経営)を持っており、かつ米海軍のトップである海軍作戦部長の特別補佐官を務めた経験をもっている。特に海軍作戦部長の特別補佐官はそう簡単になれるポストではない。そして、それは戦友からも、今もなお高い評価を受けている。

実際、米海軍の準機関紙に登場したバノンの同期達は「イデオロギーに関係なく、今も戦友だ」「あいつは凄かったよ。海軍作戦本部の幕僚として12時間以上働いた後に、夜はジョージタウン大学に通って修士号を獲得したんだもの」と語っている。

そもそも、アウトサイダーの候補者たるトランプを選挙戦で勝利に導いた俊英であり、これは米政治史上ではかなりの実績といってよい。トランプのような候補は、いつもなら共和党内ですら勝てなかったという事実をよく考えるべきだろう。

このように、バノンとはずば抜けた能力と強大なバックを持つ人物とみなすべきであり、そのバックのマーサー財団も含めて論じるべき人物なのである。そして、彼が単なるレイシスト(人種差別主義者)や狂人とは言い難い側面も持っていることにも触れるべきである。

それは、後の世代への責任感を強烈に持っていることである。彼は2011年のインタビュー等で、「自分達団塊の世代は、もっとも甘やかされ、自己中心的で、ナルシストな世代である」と語り、今こそ若い世代を苦しめた我々が経済を再生せねば……という問題意識を語っている。

少なくとも、我が国の内田樹や上野千鶴子といった我が国の団塊世代の知識人のように「若い世代は貧乏を楽しめ。みんなで貧乏になろう」と言わんばかりの主張を展開しながら、自らは財産も年金を放棄もせず、富貴を楽しむ団塊の世代の知識人には見られない問題意識であり、その一点だけでも称賛されるべきではなかろうか。

もちろん、正しい問題意識が良き手段と素晴らしい結果につながるわけでもないし、バノンが共和党保守派の中でも浮きがちであり、危うい面があるのも事実である。だが、それだけの人物でもないことは理解しておくべきだろう。

(文中敬称略)

(ロイター/アフロ=写真)
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