ユル運動で脳の気分を変える
運動により人の脳の「快適度」が上がり、「覚醒度」は緊張でも無気力でもない中間の状態に近づくことが、私たちの研究でわかりました。快適度が低く、覚醒度が低い「だらけていて無気力」な脳が、「いきいきして元気」な脳に変わり、快適度が低く、覚醒度が高い「イライラして緊張している」脳が、「リラックスして心地よい」脳に変わるのです。
恒常的に気分がいい状態になると、前頭前野(外側部)が特に活性化し、脳の認知機能は高まります。学習能力、記憶力が上がり、集中力が増し、瞬間的に言葉が出てくるようになります。注意力、計画力、行動力も高まり、仕事のパフォーマンスは確実に上がります。さらに代謝が盛んになってエネルギーが燃やせる体になり、肥満や生活習慣病も改善します。
ではビジネスマンはどのように、運動を取り入れたらよいのでしょうか。私のお勧めは、昼休みなどの休み時間を利用して、10分程度、体を動かすことです。ウオーキングや階段昇降もよいですが、一人では続けにくいもの。そこで、会社に掛け合って、社内に軽運動のサークルをつくってはいかがでしょうか。会議室を借りて、経験のある人に講師役を頼み、ヨガやピラティス、ストレッチ、太極拳などをみんなで楽しむ。社員が快適になり仕事のパフォーマンスが上がるのですから、会社にとってもこれほどいいことはありません。
私が考案した「フリフリグッパー」という体操も試してみてください。歌を歌いながら行うと、さらに脳が活性化されますよ。注意点は、運動時の気分が快適になるように配慮することです。運動しても気分が冴えないと、認知機能を高める効果が弱まるからです。
征矢英昭
筑波大学体育系教授 ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター長。医学博士。1959年生まれ。筑波大学大学院体育研究科修了、群馬大学大学院医学研究科修了。専門はスポーツ神経科学。脳フィットネス理論を提唱。
筑波大学体育系教授 ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター長。医学博士。1959年生まれ。筑波大学大学院体育研究科修了、群馬大学大学院医学研究科修了。専門はスポーツ神経科学。脳フィットネス理論を提唱。
(嶺 竜一=構成 中川原 透=イラストレーション 教えてくれる人:筑波大学体育系教授 征矢英昭)