親が貧困層か富裕層かで変化「子の海外旅行経験率」
なお、家庭環境による「体験格差」は、近年になって拡大の傾向にあります。図3は、小学生の美術鑑賞と海外観光旅行の経験率が、過去5年間でどう変わったかを、貧困層と富裕層で比べたものです。
ご覧の通り、この5年間で差が開いています。貧困層の実施率が下がっているのは、年収300万未満というくくりの中で、年収200万未満の極貧層が増えているためでしょうか。
一方、富裕層では美術鑑賞、海外観光旅行とも、実施率が上がっています。「人物重視」「生きる力」といった教育界の動向をいち早く察知し、わが子を適応させる戦略を取っているのかもしれません。間もなく公開される2016年のデータでは、どうなっていることか。
学校でのアチーブメントの規定要因として、家庭の経済力が大きいことはよく知られていますが、実際のところは、こうした経済資本よりも、ここで垣間見たような「文化資本」の影響が強いと思われます。
その意味で、見えざる文化の「差異(distinction)」を可視化するのは意義あることであって、家庭の文化資本の量と子どもの教育達成の相関を明らかにする研究も必要になります。
それは、家庭と学校の文化的距離を縮める実践を促すエビデンスにもなります。外国籍の子どもも増えてくる中、「文化と不平等」という視座を据えることも求められるでしょう。(宮島喬『文化と不平等』有斐閣、1999年)。
(図版=舞田敏彦)