カルロス・ゴーン氏の役員報酬は一般社員の138人分
ところで、この件を一般的なサラリーマンにあてはめたとしたら、一体どうなるだろうか。2月16日の東京新聞朝刊一面には、以下の記述がある。
<東京商工リサーチの集計では10年に289人だった年収1億円以上の上場企業(3月期決算)の役員数は16年に414人に増加。一人当たりの平均報酬は2億円を超えた。
役員に比べると従業員の年収の増加率は緩やかだ。同社によると上場約2200社(3月期決算)の16年の平均年収は622万円で、10年比の増加率は7.8%。一方でこの間に1億円以上を得た役員の一人当たりの報酬額は22.6%増えた>
2016年の日産自動車の株主総会で、カルロス・ゴーン社長の2015年度の役員報酬が10億7100万円であることが明かされた。ちなみに同社一般社員の年収は、「年収ラボ」というサイトによると776万円。ゴーン氏の報酬はザッと一般社員138人分である。それだけの価値を同氏が生み出していると判断されたのだろう。
さて、話は再び芸能界に戻る。私はさまざまなお笑い芸人とここ10年以上、一緒に仕事をしてきたのだが、ほとんどの芸人はブレイクしなかった。所属事務所から歩合制でもらう金額は毎月3万円ほどで、あとはバイトで12万円ほどを稼ぎ、なんとか生活をしているような方が多い。歩合にしても、ライブのチケットを自分で売った分からもらったり、テレビ番組の「前説」で数千円をもらったりする程度の仕事であるケースが少なくない。
しかし、彼らは事務所からの待遇にそれほど文句は言っていない。テレビに出る売れっ子芸人が時に「事務所の取り分が7でオレらは3」などと自虐的に言うことがあるが、彼らは売れているからこそ冗談にできるのだ。対して、売れていない芸人の大多数は、現状を「自己責任」と捉えているのである。
彼らは下積みも長いうえ、とんでもない努力をして成り上がっていった先輩を見ているだけに、「自分の努力はまだ足りないのでは」などと考えてしまう。また、本格的にブレイクすれば月収数千万円という世界に身を置けるだけに「そのギャンブルに賭けた以上は、事務所の扱いに文句を言うなんてお門違い」と考えている節がある。そして、ある一定の年齢になったらそうした競争の場から降り、家業を継いだり、コールセンターでのバイトシフトを増やしたりするのである。