【4】高卒就職 vs 専門学校進学

高額な学費に見合う「手に職」があるのか?

専門学校の初年度納付金は私立大学の文系とほぼ同じ123万円です(平均、図参照)。問題は専門学校に進学しても、その学費を回収できるのかということです。学費が回収できないのであれば、行く価値はありません。

専門学校の魅力の一つは、資格が取れるということです。下位の大学で役に立たない勉強をするくらいなら、専門学校で学んで手に職をつけてもらいたいと考える親も少なくありません。

「手に職」の代表的な資格といえば美容師、看護師、調理師、柔道整復師といったところでしょう。

このうち柔道整復師は、資格の取得まで3・4年制で学び、初年度納付金は155万円ほどですが、最近は供給過多で新規開業は難しいといわれています。

看護師はどうでしょうか。看護師になるには4年制大学の看護学部か3年制の看護学校を卒業する必要があり、このほかに2年制の看護学校准看護科を卒業するか、高等学校の衛生看護科(3年)を出て、まずは准看護師になるという道があります。学費のかからない病院付属の2年制看護学校に入り、准看護師を目指すというのは、かつては「手に職」ルートの王道でした。

ところが神奈川県などでは、医療の高度化に対応するため、今後は准看護師の養成は行わず、准看護師学校も廃止します。看護師を目指すには、最初から難関の看護学部や3年制看護学校に入学しなければなりません。

若者に人気のアニメーターや声優の専門学校もありますが、卒業しても仕事があるかどうかわかりません。そもそもアニメーターの場合、アニメスタジオに就職できたとしても年収は300万円に届かず、投じた学費は回収できないと思うべきです。

そんな事情を知らずに、専門学校へ怒鳴り込んだお父さんがいました。動物好きの娘がペット関係の専門学校に入学し、2年間で約300万円の学費を支払ったのに、卒業しても最低賃金のアルバイトにしか就けなかったというのです。しかし学校側は、2年間ちゃんと授業を受けさせて資格も取らせたわけですから、教育機関としての義務は果たしています。厳しいことを言えば、業界事情を確認せずに入学してしまった本人、そして親の責任です。

こうした現実がある以上、高校卒業時点で希望の職種に就職できるなら、専門学校へは進まないほうがいいと言わざるをえません。

しかし、高校生が希望するような就職口はたいへん少ないのが実情です。公務員は人気ですが、難関です。一世代前なら大企業の事務職や銀行など、高卒者を大量に採用する安定した就職先がありましたが、事務職や工場の現場は派遣や請負に置き換わり、銀行の採用は今やほとんど大卒対象です。

代わって高卒者への求人は、介護業界が多くを占めるようになりました。しかし仕事がきつく収入も少なく、核家族育ちで高齢者への応対の仕方もわからないため、就職しても長くは続かないといわれています。高卒時に就職を選ばず、専門学校へ行く生徒が多いのはそんな背景があるからです。

といっても、専門学校へ行くことが必ずしもマイナスになるわけではありません。専門学校を卒業すると「専門士」の資格がもらえ、これは短期大学士と同じく大学への編入資格となります。最初に入りやすい短大や専門学校に入学してから、大学への編入をめざすという道もあるのです。