そして、転機は意外に早く訪れた。入社半年後に開催された柳井も参加する新入社員懇談会である。およそ50人いた新入社員の大半が、世界を代表する経営者・柳井に強烈な畏怖の念を抱いていたことは想像に難くない。しかし、勝部は柳井に話しかける機会を虎視眈々と狙っていた。
いまが、チャンスだ。
勝部は、柳井に訴えた。
「今、ユニクロのインターネットマーケティングに大きな可能性があると確信しています。ぜひやらせてください」
柳井はこう答えた。
「実はインターネットの提案がある人から来ているんだ。会ってみたらいい」
当時のユニクロではインターネットをeコマースだけでなく全社プロモーションメディアへと位置づけつつあり、タイミングのあった提案だった。その後、いくつかの試行錯誤を経て、ユニクロのインターネットのコミュニケーションのスタイルを構築した。その結果、勝部は社内で自らの望むインターネット戦略を立案するポジションを.むことに成功した。
勝部は「毎日が自己否定の連続」であるという。「自己否定」は柳井が自著でも強調するキーワードだ。
「一度や二度の見直しは誰でもできる。20回、30回とやり直し続けることが大事。ゴールに向けて自分自身の至らない点に気づくことで成長できます」
ユニクロのあらゆる広告を“世界標準化”する勝部の挑戦は続く。(文中敬称略)
(小倉和徳=撮影)