アイデアの良否は妻の反応で判断
ぜひお伝えしたいのは、こうしたイノベーションは会社のどんな部署、どんな仕事についていたとしても生み出せるということです。そのとき大切なのは「当たり前の前提」を疑い、本質的に思考することです。たとえば人事を担当している人ならば、「なぜ多くの会社は年に1回しか新卒募集を行わず、しかも卒業見込みの学生しか採用しないのだろう?」と考えてみる。その原因を突き詰めて考えると、確たる理由はないことに気づくはずです。
実際にネスレでは、大学1年生でも、卒業して数年経った人でも応募できます。その代わりにエントリーするためには答えのない、思考力を試す課題を8日間連続で提出しなければなりません。私たちはその回答を見ることで「学生がどれぐらい本気でネスレに入りたいと思っているのか、考える力があるか」を判断しているのです。
こうしたアイデアを思いつくと、私は必ず妻に「こんなことを考えたんだけど、どう思う?」と話すことにしています。仕事とは無関係の妻だからこそ、遠慮のない一般人の意見を気軽に聞くことができる。その妻が「ピンとこない」「買わないと思う」と言ったら、きっと多くの人々もそう感じるだろうと判断します。逆に妻が少しでも興味を示せば、どんなに小さなアイデアでもすぐに実行することにしています。
私はアイデアとは「出すのが2割、それを実行する力が8割」だと思っています。いけそうなアイデアを思いついたら、すぐに信頼できる誰かに話してみて、必ず実行してみる。その繰り返しこそが「勝ち続ける秘訣」だと確信しています。
ネスレ日本社長兼CEO 高岡浩三
1983年、神戸大学経営学部卒業。同年、ネスレ日本入社。「キットカット」受験生応援キャンペーン、「ネスカフェ アンバサダー」など新たなビジネスモデルを構築。2010年社長兼CEO就任。
1983年、神戸大学経営学部卒業。同年、ネスレ日本入社。「キットカット」受験生応援キャンペーン、「ネスカフェ アンバサダー」など新たなビジネスモデルを構築。2010年社長兼CEO就任。
(大越 裕=構成 熊谷武二=撮影)