今いるポジションによって、読むべき本は変わってくる。次なるステージに向かう階段を順調に上るためにも、現在の足場をしっかり固めるための指南書を手に取りたいものだ。
経営コンサルタント 小宮一慶氏

マネジャーになった途端、輝きを失う人がいます。その原因の一つは、自分がかつて余裕でこなした仕事を、部下ができない事態に直面したとき、「部下は自分より劣る」と即断してコケにし、人望を失うということです。

マネジャーは経営の初歩。それまでの現場の仕事とは180度異なります。部下が100人いるとき、ダメなマネジャーは100人分働こうとしますが、優れたマネジャーは100人に能力を最大限発揮してもらうよう努めます。

部下がついていきたくなる人物になるには、人を使う原理原則を記した鉄板本を読まねばなりません。

例えば、古典的名著『人を動かす』です。社会人として身につけるべき人間関係の原則を具体的に明示した、あまたある自己啓発本の原点。すでに読んだ人もいるでしょうが、何度も読むべきです。私も繰り返し読んでいます。

「人に好かれる6原則」の章では、笑顔を忘れない、名前を覚える、聞き手に回る、心からほめる……といった項目が並んでいます。ごくありふれた内容に見えますが、100%実行できている人がどれほどいるでしょうか。

また、「人を動かす3原則」の章には「盗人にも5分の理を認める」がありますが、これは要するに、相手を批判も非難もしないし、苦情も言わない、ということです。著者のカーネギーはお人よしになれと言いたいわけではない。あくまで人を動かす戦略、人心操縦の一手として相手を理解することの重要性を訴えているのです。それが功を奏すれば、部下はマネジャーのために身を粉にして働くかもしれません。

人って何か? という根源的なテーマを探ることもマネジャーの務めでしょう。『9つの性格』は心理学のエキスパートが題名通り、人の性格をタイプ1~9に分類し考察した不朽の名著。

読めば、部下と自分とは違うタイプであることに気付き、同時に部下の長所も見えてくるはずです。「理解は偶然、誤解は当然」という言葉があります。コミュニケーションの大切さと難しさを述べたものですが、部下のタイプを知ったうえで日常の業務をすると、部下はより忠誠心を示すようになるかもしれません。

高い志、モラルがあることもいいマネジャーの条件ですが、それには『マネジメント』『ビジョナリーカンパニー(2)』『戦略の本質』が役立ちます。

その仕事は社会に貢献しているか。顧客や社員を幸福にしているか。そして、自分もしくは自分の部署のエゴではなく(FOR MYSELF、FOR THE DIVISION)、常に「FORTHE COMPANY」という私利私欲のない選択をできるか。“個別最適”よりも“全体最適”を優先し、人・モノ・金を配分するマネジャーになることこそが、一流の証しだということがこれらの本でわかります。