今いるポジションによって、読むべき本は変わってくる。次なるステージに向かう階段を順調に上るためにも、現在の足場をしっかり固めるための指南書を手に取りたいものだ。
「型」を覚える――。1、2年めの社員がするべきことはこれだと思います。
入社後、いきなり高いレベルのスキルを身につけようと難解な専門書を読む人は少なくありません。気持ちはわかりますが、焦りは禁物。まずは、しっかりした仕事の土台・骨組みを構築するのが先決。「一気にジャンプ」はゲームでもない限り、難しいものです。
ライフネット社長の岩瀬大輔さんによる『入社1年目の教科書』には仕事の様々な作法や指針が示されています。とりわけ「仕事における3つの原則」、例えば、頼まれたことは必ずやりきる、50点で構わないから早く出せ、などの部分は、新入社員だけでなく、多くの読者も心当たりがあるでしょう。
手前味噌ですが、私の著書『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』と併せて読むと、若いうちにやっておくべき土台づくりのエッセンスがより深く理解できるはずです。
この私の本は、外資系企業などの現場の仕事で実際に見聞きしたり、若い社員にコーチングしたりしたことをベースに書いたもの。報・連・相、会議への準備・臨み方、簡潔で相手に伝わる文書作成法、コミュニケーション法、といったビジネスパーソンの必須スキルをお伝えしています。
私自身の失敗談も盛り込んでいます。かつて、上司から指示されると、「とりあえず……します」と返答する癖が私にはありました。リズミカルに、素早い対応を、というつもりでしたが、あるとき上司から「おまえはやっつけ仕事なのか?」と。えっ、とりあえずがダメなら、どう言えばいいのか? 熟慮した結果、「まず……します」なのではないかと。ちょっとした言い回しの違いですが、「とりあえず」「取り急ぎ」と最初に言う仕事はやはりどこか雑な印象を与えてしまい、実際仕上がりもそうなることが多いと思うのです。そうした自己流の落とし穴を修正していくことも新入社員の時代にしておくと、その後伸びやすいと思います。『MBAクリティカル・シンキング(改訂3版)』は論理的な思考のフレームワークの基礎を学ぶのに最適な書です。
書名に「MBA」と銘打っていますが、これは仕事・商売をしている人全員が読むべき。私のかつての日本人上司の英会話力は、イエス、ノー、パードン? を話せる程度のブロークンなものでしたが、論理的思考だったがゆえに、外国人との議論でも対等に渡り合えた。「論理」構築のスキルは英語力養成と同様に大切なことなのです。『宇宙兄弟』『坂の上の雲』は新入社員が高い志を抱くきっかけになる良質のストーリーです。苦難・逆境のなかでも、ネガティブマインドに陥ることなく同じ目標に向かってチーム内で切磋琢磨する。つまり、ビジョンをシェアする。そんな理想の姿を追求する素晴らしさを再確認させてくれます。