機略縦横の辣腕コンサルタント。そんなイメージで語られる黒田官兵衛だが、現実には黒田家という組織を率いる「社長」であり、実践家。なによりも戦国時代には珍しい忠義の人だった。彼がもし現代日本の企業社会に蘇ったら?

処世術[1]借金膨張、倒産の危機

写真=amanaimages

大企業に比べて資金力に乏しいのが中小企業。たとえ新製品の出来がよく将来的に大口の取引が見込めるというケースでも、目先の運転資金が尽きてしまえば万事休す。新たな出資者や融資元が現れないかぎり、会社を畳むしかないでしょう。もし官兵衛が現代の経営者だったら、どう行動するか。おそらくは、大企業グループの傘下に入ることを考えるだろうと思います。ポイントは3つあります。第一に、よい身売り先を選ぶこと。第二に、できるだけ高く売ること。第三に、買われたからには、誠心誠意尽くすことです。

官兵衛が家老として仕えていた播磨国の小大名・小寺氏は、戦国末期に台頭した東の織田氏と、中国地方で強い勢力を持っていた西の毛利氏に挟まれ、これまで通りの独立を続けることができなくなりました。ビジネスに置き換えると「取締役として働いていた会社が、もはや独自経営を維持できなくなった」状態にあたります。