私も67歳で、体力的には年齢を感じざるをえません。しかし、小説を書くうえでは、年齢なんて意識していられません。小説の書き手もスポーツ選手と同じで、少しでもレベルアップしようと思うから書き続けることができます。頭にあるのは、次はもっといいものを書くことだけです。そのためには殻を閉ざすことなく、世界に対して己を開いて刺激を受け続け、考え続けなければなりません。「世界観」が固まってしまったら、それは独断になりかねない。さまざまに寛容を心がけて、常に「世界観」を更新しなければなりません。
物理的には、「死」が視野に入る年齢ではあります。2012年に私はステージ3Bの大腸がんの手術を受け、現実的な死と向かい合いもしました。いつ訪れるかわからないその日まで、私は書き続けるつもりです。
▼青山文平さんに学ぶ60代の振る舞い方「3カ条」
1. つねに自分で考える
現実と向き合って、自分ならではの「価値観」を見出す
2. 一つだけのアングルから物事を見ない
通説を鵜呑みにせず、しっかり考える際の基本的な構え
3. 「世界観」を固めずに寛容な心を養う
自分の「世界観」が固まると「独断」に走りがちになる
青山文平
作家。1948年生まれ。早稲田大学卒業後、経済関係の出版社に18年勤務。92年、「俺たちの水晶宮」で中央公論新人賞を受賞して作家デビュー。2011年、『白樫の樹の下で』で第18回松本清張賞受賞。15年には『鬼はもとより』で第17回大藪春彦賞を受賞。16年、『つまをめとらば』で第154回直木賞を、同賞史上2番目の高齢で受賞。
作家。1948年生まれ。早稲田大学卒業後、経済関係の出版社に18年勤務。92年、「俺たちの水晶宮」で中央公論新人賞を受賞して作家デビュー。2011年、『白樫の樹の下で』で第18回松本清張賞受賞。15年には『鬼はもとより』で第17回大藪春彦賞を受賞。16年、『つまをめとらば』で第154回直木賞を、同賞史上2番目の高齢で受賞。
(岡村繁雄=構成 柳井一隆=撮影)