厄介なのは、株券の名義が自分ではない場合。相続などで受け取ったまま、名義の書き換えをしていないと、自分以外の名義で特別口座に移管され、手元の株券が効力を失ってしまう。

こうした失念株主(名義の書き換えをしないまま株券電子化を迎えてしまった株主)に対しては、4つの救済措置がある。簡単に触れると、(1)券面上の名義株主と失念株主が共同で申請、(2)裁判所の判決または和解調書等の正本・謄本を添付して請求、(3)相続を証する書面等を提出して請求、(4)株券電子化の実施日から1年以内に当該株券と受け渡し証明書などの書類を提出して請求すると権利は救済される。具体的な手続きについては、株主名簿管理人である信託銀行に照会する。

もし、名義人がわからない場合や「あったはずの株券がない」といった場合も、信託銀行に問い合わせを。合併などで問い合わせ先がわからない場合は、株券電子化コールセンター(0120-77-0915)に相談するのがいい。

株券電子化は、株券を保有していた投資家にとって、株券紛失や盗難のリスクが排除されるなどのメリットがあるが、その他の投資家にとっても、配当金の受け取り方法の選択肢が増える。

従来、配当金を受け取る際は、個別銘柄ごとに銀行口座振り込みの手続きをしたり、郵便局の窓口などで受け取ったりしなければならなかった。が、証券会社で手続きをすれば、電子化後は証券口座や指定する銀行口座等への配当金の振り込みを選択できるようになる。証券口座に振り込んでもらうようにすれば、配当を次の投資資金として活用しやすい。

注意点としては、上場会社になりすまして、特別口座開設の手数料を請求するなどの詐欺的行為にだまされないようにすること。また新制度がスタートする際は、システム障害などのアクシデントが起きやすいものだ。年末年始、株券電子化に関するニュースについてもまめにチェックするようにしたい。

(大沢玲子=構成)