米ワシントンの日本コミュニティ

若年時に約10年間、米ワシントンで働いた頃、日系企業の駐在員や各省庁のエリート、新聞記者など約400人が集まるコミュニティにいました。分野は違えど、国益を背負う彼らの仕事は情報収集です。私はわりといい事務所に勤めたおかげで、彼らに良質な情報を提供できました。

当時はバブル崩壊後の1990年代半ば。様々な制度が硬直化し、機能しなくなっていた日本社会の閉塞感をどうしたらよいか、ブレークスルーして新しい時代を切り拓くために何をすればよいか、皆悩んでいました。

そんな彼らと寄り集まって、「今これが問題だよな」と問題意識を共有し、改革の道を模索していつもディスカッションをしていました。それをおのおのが持ち帰って頑張る。何となくできあがった関係ですが、そうしたやり取りの中で互いの信頼関係がいつの間にかできていたように思いますし、帰国して日本の中枢を担うようになった彼らとの人脈が今、一番役に立っています。

現在の顧客はリピーターが多く、新規開拓のために交渉先との間に「信頼関係を築かねば」と、ことさら意識した付き合いはしません。ただ、顧客との関係維持には日常的に努めています。政治家に対しては、特に用事がなくても顔を出し、その時々で大事なテーマについてのディスカッションを年中やっています。ここぞと思ったときは「先生、これをやるべきじゃないですか」と、こちらの全人格を懸けて議論します。

そういった際に心がけるのは、「時間(=歴史)」「社会」「地球環境」の3つです。3つのうちのどれか一つを通じてその課題を大局的に俯瞰し、「大義」を立ててそれを唱道(アドボカシー)します。