身近で国民生活に直結する憲法改正を目指す
【塩田】自民党が2012年4月に策定した「日本国憲法改正草案」では、天皇を元首に、国旗・国歌を憲法に規定、第9条で国防軍を、前文の書き直しも、といった点を謳っています。維新の会はどう対応しますか。
【小沢】具体的な話が出てきていないので、なんとも言えませんが、個人的にはなかなか賛成はできないと思います。だから、「3分の2」というのが大事なんです。維新が決定権を持っています。
【塩田】憲法第96条が改憲案の国会発議について、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成が必要と定めていますが、その点ですね。
【小沢】はい。自民党だけでなく、われわれが入って3分の2ですから、われわれが抜けると、3分の2に欠けます。維新はそれだけのパワーを持っているということです。公明党も同じです。民進党の野田佳彦幹事長が「自民党の憲法改正草案を撤回しないと議論に入れない」というふうなことを言いましたが、持ち出すなというのはおかしな主張だと思いますが、持ち出しても反対なら否決するパワーを維新は持っているということです。
【塩田】だとすると、各党がみんな土俵に上がったけど、各党が一致して取り上げる改憲項目が見つからないという話になったりしませんか。
【小沢】多分、非常事態条項の話が出てくるでしょう。ですが、私の個人的な考えでいえば、非常事態条項に関しては、国民の基本的人権に手を付けるような形の条項の新設は難しい。非常事態のときに衆議院が解散していた場合への対応とか、実務的な話は合意可能です。
【塩田】憲法改正の議論が進むと、改憲問題への対応を対立軸として、大きな政界再編が起こる可能性はありませんか。維新はそういう新潮流を起こそうと考えているのでは。
【小沢】もともと橋下さんたちの原点はそこだったと思いますよ。旧民主党を2つに割って、憲法改正を進める人たちとわれわれが合流し、自民党に対峙する政党をつくるというのは維新の会の最初からのシナリオ、目標です。それは依然としてあると私は思います。自民党と新党の2大政党と、0.5の旧社会党系の人たちの「2.5政党」が一番望ましい姿と私は思いますけど。最近はわれわれも明示的にそういう議論はしていませんけど、その話が原点だと思います。
【塩田】今後の具体的な憲法改正作業についてどんなスケジュールを想定していますか。
【小沢】まず改正案をつくらなければ。今国会でテーマの選定まで進み、17年の通常国会でそのテーマに沿って議論し、改正条項の条文案をまとめて憲法改正原案をつくる。維新としては、来年の通常国会で発議の議決をやりたいと思います。17年後半の国民投票というスケジュールを目指したいですね。
【塩田】各党の状況を見て、そこまで行くかどうか。どう見通していますか。
【小沢】この臨時国会でテーマの話がどこまで進むかでしょうね。
【塩田】安倍首相の自民党総裁任期は18年9月までです。任期延長論も議論になっていますが、仮に安倍首相が19年以降まで続投したとしても、19年は4月に統一地方選、夏に参院選、10月に消費税増税、20年は東京オリンピックが控えています。
【小沢】だから、憲法改正は18年の夏までですね。われわれとしては17年の通常国会での発議を目指すということです。
【塩田】それにしても国民の憲法問題への関心の乏しさが大きな壁となりそうです。仮に国会で改憲案の発議ができたとしても、国民投票で否決となる可能性があります。
【小沢】テーマとして大きすぎて遠すぎるんですね、憲法って話は。維新は一貫して、身近で国民生活に直結する憲法改正を目指しますと言っています。第9条の話も大事だけど、そこではなく、と声を大にして訴えなければいけないと思っています。憲法改正で大事なのは、国民の合意を得なければ進まないということです。合意できるところから始めるというやり方を「お試し改憲」と批判するメディアもあるけど、国民の合意を得て、できるところからやっていくのが民主主義の第一歩だと思います。
衆議院議員・元環境相・現日本維新の会憲法改正推進委員会会長
1954(昭和29)年5月、甲府市生まれ。山梨県立甲府南高、東京大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)勤務を経て、93年の総選挙に山梨全県区から日本新党公認で出馬して初当選(以後、比例南関東ブロック、山梨1区、比例近畿ブロックで合計当選8回)。96年に民主党に参加し、2009年に鳩山由紀夫内閣と菅直人内閣で環境相に。12年に民主党を離党して日本維新の会(旧)に入党する。国会対策委員長、国会議員団幹事長を歴任し、維新の党でも幹事長代行兼国会議員団幹事長、憲法調査会長などを務めた。15年の維新の党の分裂の際に離党し、改革結集の会を旗揚げして会長となる。16年3月におおさか維新の会に入党した。著書は『細川政権 250日の真実!』『ニューリベラル国家論』など。