韓国、台湾はすでに調査終了
注意したいのは、公図のなかに「字限図」と「14条地図」があり、両者の精度が大きく異なること。そして、素人には簡単に見分けがつかないことだ。
「昔は字限図の紙が古かったので一目でそれとわかりましたが、いまはコンピュータ処理されているのでパッと見ただけでは見分けがつきません。チェックしたいのは名称と測量の年代。『土地台帳付属図面』と書いてあるのは字限図。また、測量の年代が新しいほど実測に近いと考えられます」
「自分が住んでいるのは都市の住宅地だから、正確な地図ぐらいあるだろう」と考えたら大間違いだ。「14条地図」の整備は都市部ほど遅れている(都市部の14条地図整備率は2割程度)。
しかし一方で、韓国や台湾では全国土の地籍調査がすでに終わっているという。なぜ日本とこんなに差がつくのか。
「韓国と台湾にはそれぞれが抱える地政学的要因があります。正確な地図は国の防衛のためには必須です。シーボルトが伊能忠敬の地図を持ち出して捕まったのも、当時はそれが国防上の機密だったから。明治時代に日本地図を完成させたのは陸軍でした」
日本で正確な公図や登記簿の整備が遅れている要因はいろいろあるが、一因にはいわゆる「平和ボケ」もあるのかもしれない。
(図版作成=大橋昭一)