公図の精度は“ピンキリ”

土地の売買は事前に現地で面積を測量したうえで行われる「実測売買」と、測量なしで売買する「公簿売買」があることをご存じだろうか。「実測売買」では測量費用がかかるが、これを節約するため、登記簿に記載されている面積をもとに代金を算出して売買するのが「公簿売買」だ。

ただ、測量費用がかからないからといって安易に公簿売買を選んではいけない。公簿売買には、実際の土地の面積と登記簿に記されている面積が違うリスクがあるからだ。登記簿に記載されている面積が実測より大きければ、売買代金を余計に払うことになる。

登記簿は極めて証明力が高い公的な書類だ。にもかかわらず、そこに記載された面積が必ずしも正確でないのはなぜか。日本土地家屋調査士会連合会副会長の海野敦郎氏は、歴史的経緯を教えてくれた。

「土地の登記簿は、もともと所有権などを示すためのものであり、土地の位置や区画、面積は『公図』と呼ばれる地図で示していました。初期の公図は『字限図(あざぎりず)』と呼ばれ、明治時代に作成されました。当時は測量技術が発達していないこともあり、地図の精度は低かった。また、税金を多く取るために実際より大きめに面積を記載する傾向がありました。それがベースなので、登記簿の面積も“それなり”なのです」

国もこの状況を放置していたわけではない。1951年には国土調査法を施行し、精度が高い地籍調査図の作成を始めている。法務局も不動産登記法14条第1項に基づいて精度が高い地図を作成しており、地籍調査の成果も取り込んだこれら精度の高い地図は「14条地図」と呼ばれる。