津波により、すべてが押し流されて更地のようになってしまい、どこが誰の土地なのかがわからなくなるケースが想定される。権利書すら紛失してしまったという方も大勢いるだろう。
土地の権利証は、不動産を取得した際に法務局から交付される土地の所有権を証明する書類だ。権利証を失ったとしても、不動産の所有権などの権利を失うことはない。失った権利証を、他の何者かが悪用して、不正に登記されたり、第三者に転売されたりすることを心配する方もいると思うが、新たに登記する場合は、権利証だけでなく、所有者の印鑑証明をはじめとする本人確認資料も必要になるので、権利証を失くしたからといって、すぐ悪用されることはまずない。
もしどうしても自分の所有する土地が不正に登記されることなどが心配な場合には、「不正登記防止申出制度」を利用するという手がある。
不正登記防止申出制度とは、不正な登記が行われる、差し迫った危険がある場合に、申し出から3カ月以内に不正な登記が行われることを防ぐための制度だ。具体的には、申し出から3カ月以内に他の誰かが登記の申請を行うと、申し出を行った人に対して通知が行くという仕組みになっている。よって、自分の身に覚えがない登記を防ぐことができる。まずは、最寄りの法務局に連絡すると手続きの仕方を教えてくれるはずだ。
また、今回のように建物の多くが津波で流されてしまった場合でも、土地には「境界標」というコンクリートの杭や金属鋲が打ちつけられており、それが土地の境界線を示す目印になっているので、その境界標もろとも流されていなければ、比較的早期に自分の土地の境界を画定させることができる。これについては法務省が、復興作業に際してできるだけ境界標や、境界線の目印になる側溝、石垣の基礎部分などを残すように呼びかけている。
境界標さえもわからなくなってしまったという場合には、最終的に隣接している者同士の合意が必要になるため、隣地の者同士の立ち会いによって確認し合うことになる。ただ、今回は津波によって多数の方が亡くなっているため、話し合いができずに、なかなか自分が所有している土地の画定が進まなくなるというケースも想定される。
※すべて雑誌掲載当時