「国民の祝日」は公務員が休む日
今年から国民の祝日「山の日」が始まった。休みが増えるのはうれしいが、8月11日は山にゆかりのある日ではない。そもそも、国民の祝日とは、いったい何なのだろうか。
国民の祝日を理解するには、まず「休日」の種類を押さえる必要がある。休日には、法的には3つの意味がある。「慣習上の休日」「官公庁の休日」「労働契約上の休日」だ。
慣習上の休日は、日曜日など、「業務を行わない慣習の日」を指す。民法で、債務の弁済等の期間の末日がいつであるかが問題になることがある。たとえば月末払いの取り決めなのに、月末が日曜日で銀行が休んでいたら支払えない。そうしたケースを想定して、民法では、期間満了日が慣習上の休日に当たれば翌日に延長することにした。
慣習上の休日は、地域や時代で変わりうる。齊藤雅俊弁護士は次のように解説する。
「江戸時代の慣習が残る明治初期、お役人は1と6のつく日に休んでいました。日曜に休み始めたのは、1876年の太政官達しで、官公庁が日曜を休日としてから。一般企業が官公庁の休みに従う必要は必ずしもないですが、官公庁にならうところが多くなり、やがて多くの人が慣習的に日曜に休むようになりました」
つまり2つ目の意味である官公庁の休日が、民間の慣習上の休日に影響したわけだ。
注目したいのは、日曜日のほかに官公庁の休日とされていた祝祭日の定めが戦後、新法制定によって「国民の祝日」に発展したことだ。今は「国民の祝日」という名がついているものの、もともとの祝祭日は国民が休むためでなく、公務員が休むための日だった。
事実、民間では祝日に出勤する会社もある。休日の3つ目の意味は、労働契約上の休日。労働契約や就業規則で祝日を自動的に休日にしている会社が多いが、労使の合意があればカレンダーを無視してもかまわない。「国民の祝日」は官公庁の休みであっても、必ずしもサラリーマンの休日ではないのだ。