なぜ見積もりは3社から取るべきなのか
弔事は突然訪れることが多く、喪主側には「早く葬儀社を決めなければ」というプレッシャーがかかる。そうした状態で、広告などでたまたま目についた葬儀社に決めてしまうと、のちのち後悔することになるかもしれない。可能であれば、気持ちに余裕のあるうち(故人の生前)に、数社から見積もりを取ったうえで1社を選んでおくことが望ましい。
といっても、たくさん見積もりを取ればいいというものでもない。
「なかには6社から見積もりを取り、どう判断したらいいかわからなくなって私のところに相談に来られた方もいます。あまり多すぎると選べなくなるので、3社くらいにしておくべきでしょう。また、私の経験上、知らない街の葬儀社さんと接すると、3社に1社は丁寧で信頼できる会社です。その経験則から、3社に当たればまず大丈夫だと思います」
最近はネット経由で葬儀社を選ぶケースも増えている。ただし「ネットで広告している葬儀社も玉石混淆です」。
公営葬儀場の間取りや交通アクセスなどをこと細かく説明した後で、「葬儀のお申し込みはフリーダイヤル××番へ」と、あたかもその葬儀場専属の葬儀社のような書き方で、利用者を誘い込む業者もいるから要注意だ。実際には公営の葬儀場は、どの葬儀社でも使用できる。
社葬など規模の大きな葬儀では、斎場選びが問題となる。候補となるのは、東京では築地本願寺、上野の寛永寺といった著名な寺院だ。そうした寺で葬儀を行うというと、「お寺の檀家や、同じ宗派の人でないとできないのではないか」とか「お寺専属の葬儀社があるのでは」と思いがちだが、それは誤解。そうした寺院は葬儀では会場を貸すだけ。宗派がどこであろうと、式場として借りられるし、読経を頼む僧侶にしても、よそから連れてきて構わない。葬儀社もどこを選んでもよい。
先年、地方で会社を経営している市川氏の知人が、東京の大寺院で先代社長である父の社葬を行った。
「お寺に紹介してもらった葬儀社に料金を聞いたら、『社葬なら1000万円』と言われたというのです。驚いて『そんなに出せない』と言ったら、『じゃあ500万円』といきなり半額にディスカウント。それで一気に信用できなくなったと、私に相談してきたのです」